しかし、谷口プロデュースのスピーチ原稿を当の安倍首相は大のお気に入りなのだという。前出「月刊Hanada」の対談で、小川榮太郎氏が谷口参与のスピーチ原稿を評価する安倍首相のこんな言葉を紹介している。
「谷口さんのスピーチ原稿はうまいんだよ。外務省に書かせるとお役所的になっちゃうけど、谷口さんのは違う。練習で読み上げているときに、自分でも思わず涙ぐんでしまうんだ」
練習中に自分でも思わず涙ぐんでしまうって。「ウラジーミル、君と僕は…」も涙ぐみながら練習したのだろうか。
ちなみに、このお褒めの言葉に谷口参与は謙遜しながら、安倍首相の演説をこう絶賛してみせた。
「スピーチは安倍総理の安倍総理による、安倍総理のためのものです。ご自身が、原稿に幾度も注文を出し、主題を決めてキーフレーズを着想します。何よりスピーチとは「演者」の、本番1回限りのパフォーマンスをもって初めて完成する音声芸術の一種ですから、もし賞賛を得られたとしたら、それはその一回性の勝負に懸けた演者に帰属する」
「音声芸術の一種」という賛辞も大概だが、スピーチが「安倍総理の安倍総理による、安倍総理のためのもの」って。政治家のスピーチというのは、国民のためや国際社会のためにするものなんじゃないだろうか。
そう考えると、北方領土4島の帰属がロシアに固定化されようとしているときに、「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」「ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」などと呼びかけてしまうのも、当然なのかもしれない。スピーチは「安倍総理の安倍総理による、安倍総理のためのもの」なのだから。
(編集部)
最終更新:2019.09.14 09:24