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安倍応援団や極右議員も流布『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』の嘘と確信犯的トリックを徹底的に暴く検証本が

 実は、ここ数年で一気に広がった虐殺否定論には“タネ本”が存在する。都議会での自民党議員による質問でもあげられた『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(工藤美代子、2009年)と、その5年後に出版された『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』(加藤康男、2014年/ワック)だ。

 ふたりの著者は夫妻であり、二冊の内容はほぼ同一。取材・執筆は共同で行ったといい、後者は版元を変えた事実上の新装版と言える。本稿も『トリック』にならい、以下、二冊を合わせて便宜上『なかった』と表記しておこう。

 加藤氏は『なかった』をいわゆる“トンデモ本”と一緒にすべきではないと主張する。なぜならば、〈この本の内容を仔細に検証すればするほど、その主張が、史料の恣意的な切り貼りなどの意図的な作業によって初めて成立していることが分かる〉からだ。

〈マジシャンが演じる見事なトリックを見て超能力だとは早合点する人はいても、自らを超能力者だと思い込みながらマジックを披露するマジシャンは存在しないだろう。本人はタネを知っているのだから当然だ。つまり、『なかった』はトンデモ本ではなく、自らも信じてはいない「朝鮮人虐殺はなかった」という主張を読者に信じさせるために様々なトリックを駆使した“トリック本”なのである。〉(『トリック』より)

 どういうことか。たとえば前述した「朝鮮人暴動」の新聞記事だ。『なかった』はこれらを多数引用しているのだが、加藤氏によれば、『なかった』が“朝鮮人暴動実在の証拠”という文脈で使っている16本の史料のうち、実に12本が震災直後(1923年9月8日まで)の誤報記事なのだ。しかも、加藤氏は残りの4本についても原文や史料にあたることで、証言の意図的な切り取りであったり、論旨を著しくねじ曲げているなどの問題を明らかにしている。

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