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2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催まで1年を切ったが、本当にこのまま大会を開いてしまって大丈夫なのか? という懸念が各所で噴出している。
いちばんは「酷暑」の問題だ。東京オリンピックは来年の7月24日に始まるが、その時期に開かれるのであれば当然なされているべき暑さ対策がまるでできていないのだ。
その懸念は当のアスリートからも出ている。先日、世界記録保持者で東京オリンピックでの活躍が期待されている競歩の鈴木雄介選手がオリンピック本番でのコース変更を求めたと報じられた。
「サンスポ」(8月8日付)によれば、鈴木選手は7月末の早朝に本番で予定されているコースを試走。「日陰がない。脱水になる可能性も大いにある。可能なら再考してほしい」「選手はもちろん、観客にも酷なこと」と語ったという。
連日の酷暑で熱中症は「人命」に関わる緊急性の高い問題となっている。今年7月29日から8月4日までの1週間に熱中症で救急搬送された人は1万8347人にもおよび、このうちの57人が死亡した(総務省発表)。
先週末には、国内最大規模の同人誌即売会・コミックマーケット(東京ビッグサイトにて開催)において、熱中症が原因と思われる体調不良を訴える人が続出し、救急搬送された人まで出たのは大きな話題となった。コミケが開かれた東京ビッグサイトは東京オリンピック時に国際放送センターとメインプレスセンターが置かれる予定だが、8月8日にはその建設現場で男性作業員が倒れ、病院に搬送後に死亡が確認された事故も起きた。報道では熱中症が原因で倒れた可能性もあると報じられている。
こうした熱中症の影響はスポーツイベントにもおよんでいる。7月26日に東京・品川区の潮風公園で行われたビーチバレーのワールドツアー東京大会では、女子日本代表の溝江明香選手が熱中症になり、試合を一時中断する一幕があった。ネットニュース「Sponichi Annex」(7月26日付)によれば、溝江選手は「かなり過酷な環境で、世界で1番暑いと思う」とコメントし、この季節の東京でのプレーの過酷さを語ったという。
この酷暑のなかオリンピックを開催するということは、激しい運動をするアスリートはもちろん、大会を運営するスタッフやボランティア、観戦するオーディエンス、会場にいるすべての人が熱中症のリスクを負うことを意味する。
単なる「暑さの問題」と楽観視することは許されない。「人命」に関わる極めて深刻な事態である。
しかし、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会や東京都がその問題の大きさを認識しているかには疑問符をつけざるを得ない。
大会組織委員会や東京都も「暑さ対策」と称した施策を色々と行っているのだが、そのどれもが大きな効果を得られているとは言いがたいからだ。
そのひとつが「打ち水」。道や庭先に水を撒いて涼を得る、昔ながらのやり方だ。昨年7月には小池百合子東京都知事が東京ミッドタウン日比谷で行われた打ち水イベントに参加し、「江戸時代の知恵、江戸のおもてなしだ」などと語っていたが、この程度で抜本的な解決になるわけもなく、そもそも、アスファルト舗装された道の上に水を撒くのは逆効果との専門家の指摘もある。
その無策ぶりは1年経っても変わっていない。今年5月には、セキュリティー検査による入場列を仕切るためにアサガオの花が飾られる予定だと報じられた。組織委員会の担当者はその狙いについて「涼しげになってリラックスしてもらう」とコメントしている。