先に引いた匿名掲示板内のネトウヨは水木しげる没後に放送された今シリーズの『ゲゲゲの鬼太郎』に対し〈反日パヨクは原作者が故人であることをいいことにやりたい放題〉としていたが、きちんとした読者なら説明するまでのなく、こうした戦争や権力の不正に抗する姿勢こそが水木しげる漫画の核である。
水木しげるは妖怪漫画と並んで「戦争」をテーマにした漫画を何作も発表し、残虐行為そのものはもとより、軍隊内で暴力を伴ったいじめが横行するなど人間性の否定を正当化する側面も含めて、戦争を徹底的に否定した。
そういった批判精神は戦争にだけ向けられていたわけではない。過重労働を強いる社会や、発展の名の下に自然破壊を押し進める環境問題など、水木しげるは漫画を通じて人間社会のおかしさを風刺指摘し続けていた。
現在の日本社会における問題に敏感に反応し、物語を通じて批判しようとする現在の『ゲゲゲの鬼太郎』は、水木しげるの精神を確実に受け継いだアニメシリーズだといえるだろう。
とはいえ、心配なのは、こういった表現が日増しにできなくなっているという、現在のメディア状況をめぐる事実だ。
先日も、安倍政権批判に踏み込んできた数少ない番組である『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS系)が番組改編期でもない不自然なタイミングで終了したばかりだ。
『ゲゲゲの鬼太郎』のようなフィクションに対する圧力も始まっているかもしれない。状況は厳しいだろうが、『ゲゲゲの鬼太郎』製作陣には、これからも卑劣な圧力や攻撃に負けず、ぜひ、水木しげるの遺志を表現する作品をつくり続けて欲しい。
(編集部)
最終更新:2019.07.07 07:59