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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第33号

ブームの退職代行サービスだけでは対応できないブラック企業の恫喝手口! 嫌がらせ損害賠償、残業代支払い拒否…


 巷で退職代行業者がブームになっている。そこで、退職に関して私が担当した事件について紹介する。

 依頼人が勤務する会社は防音設備の取り付けなどを業とする零細企業であり、依頼人は当初、事務として採用された。しかし、従業員は、正社員である依頼人の他はパートが2名しかおらず、なし崩し的になぜか工事現場での取り付け工事をはじめ、あらゆる業務をさせられるようになってしまった。

 そして、会社は残業代の算定基礎時給を一方的に1000円と定め、その金額で計算した残業代しか払わなかった。きちんと計算すると、依頼人の残業代算定基礎時給は1400円~1500円程度となり、合計すると優に100万円を超える残業代が未払となっていた。

 正社員が1人しかいないため、辞めると言っても社長は辞めさせてくれない。思い悩んだ依頼人は、労働ホットラインに電話をかけ、その日の担当だった私に依頼することになった。

 なお、労働ホットラインとは、日本労働弁護団が実施する無料の労働相談であり、各地の労働弁護団で毎週開催している。詳しくは労働弁護団のウェブサイトをご覧いただきたい(http://roudou-bengodan.org/hotline/)。私もホットライン経由で何件も事件を受けている。

 依頼人は、入社してから4年6カ月以上経過していたので、30日分の有給休暇を取得する権利を有していた(労働基準法39条1項2項)。有給休暇の時効は2年であるから、2年分の有給休暇を合算して取得することができる。勤続3年半で14日、4年半で16日取得できるので、合計で30日ということである。有給休暇の一覧表は下記厚労省資料を参照されたい(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf

 依頼人と相談した結果、有給休暇を全て消化した上、残業代を請求することになった。私は会社に対し、内容証明郵便で、残業代の支払いを要求すると共に、有給休暇の取得を通知した。

 その後、すぐに社長から連絡があり、支払う方向で考えていることを告げられた。また、社長の家族等が依頼人の家に行ったりしていたのだが、それも今後しないとのことであった。

 しばらくして、会社側に弁護士がついたが、支払うという方針は変わらなかった。ただ、この弁護士、とても妙な主張をしたので非常に驚いた。「この会社は法定休日が無いんですよ!だから休日割増しはありません!」と言うのである。日本の法律が適用されないという主張なのだから、治外法権の抗弁とでも名付ければ適当であろうか。

「いやいや、労働基準法で決まっているんですから、適用されないなんてあり得ないんですよ」と言ったところ、理解していただいた。弁護士でもこのように誤った知識を持っている場合が往々にしてあるので、油断してはならない。特に会社側の代理人は、わざといい加減なことをいう者もいるので要注意である。

 交渉の結果、結局こちらの要求額に近い額で和解ができた。最初から弁護士を入れていたのでこれほどスムーズに事が進んだと言えるだろう。正社員が1人しかいないのだから、依頼人だけで交渉していた場合、これほど速やかな解決は不可能だったと思われる。

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