実際、『サタデージャーナル』のMCをやることは楽な仕事ではないのだろう。それは、「圧力」をテーマにしたパックンとのやり取りでこぼれた上田の一言からもよくわかった。
上田からの「正直、圧力を感じたりとかしますか?」という質問に、パックンは「まあ、正直、僕は『政治的発言に気をつけてください』と言われたことは何回かあります。ディレクター、あとは、事務所。ぶっちゃけ、弱小事務所なんですよ。かばいきれないのは事実なんです。やっぱり、気をつかうんです。言い切らないで疑問形にしたりして。『こういう政策に対して、こういう批判の声も世の中から出てきてるような気がしなくはないんですけど、そういうことをおっしゃる方に対してはどう答えますか?』(とか)。『(意見を言っているのは)俺じゃないよ』という雰囲気を(出す)」と答える。
ジョーク混じりのパックンの答えに上田はいつものガハハ笑いを交えつつ「どんだけ守ってんだよ!」「汚いな手法が(笑)」とツッコミを入れるが、その後に、ポツリとこうつぶやいたのだ。
「まあ、気持ちはわかるけどね」
実際、本稿冒頭で紹介したような上田の「赤坂自民亭」や沖縄に関する発言は、ネトウヨに噛み付かれて炎上している。その状況は本人も重々認識しているだろう。
しかし、上田が『サタデージャーナル』でおこなっている仕事は、現在の地上波テレビにおいて稀有なもので、上田のような芸人が存在してくれていることは数少ない希望ともいえる。
上田にはこれからもなんとか頑張ってもらいたいが、そんなことは上田自身も十分わかっていることなのだろう。この日の『サタデージャーナル』の最後に上田は、カメラに向かってこのように語ったのだ。
「自由闊達な議論を許さない空気というのは世の中をどんどん萎縮させ、閉塞感のある社会を生み出してしまいます。自分と考えの違う意見を封殺しようとすることは、ひいては自分自身の首を締めることになる。後々、自分も意見を言えない世の中を生み出してしまうのではないでしょうか。自分と考えの違う人の意見を寛容な心で受け止めて、さらに、客観的に自分の考えは果たして正しいんだろうかという疑いの心をもつことも大切ではないかと思います」
自由闊達な議論がなされる社会をつくるためには、『サタデージャーナル』のような番組が絶対に必要だ。ネトウヨ層の炎上攻撃に負けず、長く続く番組になってほしい。そして、願わくば、もっと多くの人が見る時間帯に放送される番組になってほしい。
(編集部)
最終更新:2019.06.13 08:44