日本原子力産業協会の原子力広報サイト「あつまれ!げんしりょくむら」トップページ
「あつまれ!げんしりょくむら」なるウェブサイトが波紋を広げている。人気ゲーム「おいでよ どうぶつの森」みたいな“ゆるカワ”を装っているが、そのタイトルが示すように、“原子力ムラ”自身がぶちあげた正真正銘の原子力広報サイトだ。
同サイトは今月8日、原子力関連企業などでつくる業界団体・日本原子力産業協会(JAIF)が開設したものだ。トップページにはロドニー・グリーンブラット(「パラッパラッパー」などで知られる)のようなポップ調で描かれた江戸時代風のモチーフやキャラクターがひしめき合う。Twitterではこんな批判の声が多数あがり、大炎上した。
「控え目に言って狂っている」
「人をバカにするにもほどがあるっちゅうねん。瓦礫がむき出しの原発がころがってるっちゅうに。」
「まだ原発事故から8年しか経ってなく、故郷に帰れない人、故郷を捨てざるを得なかった人、自主避難支援を打ち切られて、途方にくれてる人、そういう人への配慮はまったくないのね」
「原子力ムラが本当にあることを原子力ムラ自ら公言するとは思わなかったです」
こうした事態を受けて、JAIFは12日夜、同サイトを閉鎖。現在、トップページには〈次世代向けサイト「あつまれ!げんしりょくむら」のwebサイトについては、不適切な表現があったため削除いたしました。ご不快な思いをされた皆様に、慎んでおわびいたします〉との文言だけが記されている。「不適切な表現」な何であったかは一切明示されていない。
いずれにしても、サイト開設から批判集中そして閉鎖に至るまでわずか5日と、あっという間だった今回の炎上案件。実際のところ、「あつまれ!げんしりょくむら」はどういった内容だったのか。
たとえば「kurofune」なるサイト内コンテンツでは、ペリー風の外国人キャラクターが「ハロー ハロー ニホンのミナサーン!」と挨拶。このセンスに呆れるしかないが、ようは欧米の原発推進団体代表らのメッセージを紹介するというものだった。ほかにも鎌倉時代の六波羅探題をもじった「六波羅短大」なるコンテンツでは「シラバス」と題し、14歳で融合実験に成功したとされる核物理学者テイラー・ウィルソン氏の訪日動画などを掲載していた。サイトコンテンツは今後も更新を予告されていたが、閉鎖されるまでに原発事故の実態を説明するような記載は一切みあたらなかった。
福島第一原発の未曾有の事故をまねいた原子力ムラが、ここまで呑気に原子力発電をPRしてしまう神経は、まさに「げんしりょくむら」を自称するだけのことはある。批判が殺到したのも当然だ。
今回、ネット上で大きな批判があがったことによりJAIFは早期にサイトを閉鎖せざるをえなくなったようだが、しかし、こういう“原発PRサイト”は氷山の一角でしかない。
本サイトでは定期的にレポートしてきたことだが、3.11以前の原子力ムラはマスコミに大量の広告を出稿することで、“原発批判”をタブーにしてきた。当然、東日本大震災を機にこうして形成された“安全神話”へ批判が集まり、一時期、原子力ムラも広告出稿を控えるようになったのだが、それが事故から数年後には完全に復活。それどころか、原子力ムラは新聞や雑誌、テレビなどのオールドメディアだけでなく、ウェブ媒体やSNSにも力を入れるようになっている。