どう変えたらいいか分からないX氏がデスクで頭を抱えていると、社長室から出てきた社長が、X氏の作った文案に赤ペンで訂正箇所を指摘した。X氏は、その指示通りに訂正し、社長に見せるのであるが、やはりやり直しを命じられるのである。X氏は混乱したが、さらにやり直しを命じられた個所を直して、再度持っていき、また、やり直しをさせられる。そんな理不尽なやり取りを何回も行ったところで、ようやく「ま、こんなもんだろ」という捨て台詞とともに、文案が決裁された。
その後、X氏は、部下とともに、「上の会社」へ交渉へ行った。極めて難しい交渉であったが、粘り強い交渉で、未回収金を回収することはできなかったが、この会社と取引をすることなど、諸々の条件を勝ち取り、未回収金の金額以上の成果を得ることができた。
この会社との新しい取引が始動することになり、X氏ら交渉担当者と、社長、そして、「上の会社」の担当者らが、挨拶をかねた食事会を開いていたところ、みんなでゴルフへ行こうという話となった。具体的な日付や場所まで決まったところで、社長は「Xはなしだな」として、X氏だけを排除する発言をした。理由は、X氏は未回収金を回収できなかったからだという。
しかし、酒席での発言であるので、X氏は、もしこの言葉通りにゴルフに参加しなれば、あとで社長にどやされると感じ、ゴルフの日には行くことにした。
ゴルフの日の当日、クラブハウスでX氏を見た社長は、鬼の形相となり、「なんで来たんだ、ばかやろう!」と大声を出した。周囲の人たちが一斉にX氏や社長を見る中で、X氏はいたたまれなくなり、「では、帰ります」と述べると、今度は「受付はしたのか?したなら金を払ってから帰れ、ばかやろう!」と述べたのである。そこまで言われたX氏は、「わかりました」と述べて、席を立つと、社長は「本当に帰るのか、ばかやろう!」と再び大声を出したのである。
X氏は、どうすればいいのか分からず立ちすくんでいると、社長は「AさんとBさんの分は私が払います」と、取引先の人の分を払うと言ったあと、X氏に向かって「お前は自分で払え、ばかやろう!」と述べたのであった。ゴルフのプレイ中も、X氏は社長から怒鳴り続けられた。あまりにX氏がかわいそうに見えたのか、キャディの女性から、「もう少しで終わるからがんばって」と励まされる始末であった。
この一件から、X氏は、社長の顔を見るだけで、緊張を感じ、動悸が激しくなるようになった。