国の労働賃金実態を表すための統計を、「アベノミクスの成果」を表すためのものだと言ってしまっているあたりからも、姉崎統計情報部長が中江首相秘書官から伝えられた「問題意識」が大きなインパクトを与えていることがよくわかるが、じつは、このあともっと露骨な動きが出てくる。
きょうの衆院予算委員会では、中江首相秘書官がいつ安倍首相にこの統計の問題を伝えたのかが焦点のひとつとなったのだが、そこで中江前首相秘書官はこう答弁した。
「(2015年)9月に賃金について国会で質問があり、2015年のサンプル替えの影響があったという答弁を総理答弁として準備していたので、その答弁の勉強会の際に(総理に)説明した」
「(勉強会は)当日の午前中」
この「国会質問」とは、2015年9月3日の厚労委員会で共産党の小池晃議員がおこなった質問だ。このとき、小池議員は派遣法の問題を取り上げ、そのなかで「社員一人当たりの給与額は大企業でも1%しか増えていない」と追及し、対する安倍首相は「実質賃金は改善をしてきている」としながら、6月に賃金が名目・実質ともにマイナスとなった要因について「これは本年1月におこなった調査対象事業所の入れ替えもありまして」と答えている。
つまり、この答弁をつくるために9月3日当日の朝におこなわれた「勉強会」で、サンプル事業所を総入れ替えした結果、賃金が低く出ている問題をはじめて安倍首相に伝えた、と中江首相秘書官は言うのである。
果たしてそのような重大な問題を約5カ月も伝えていなかったのかとも思うが、しかし、じつはこの日を境に大きな変化が起こったのも事実だ。
というのも、この9月3日を境に、前述した姉崎統計情報部長の忖度にさらに拍車がかかり、検討会の方針が大きく変えさせられたのだ。