たとえば、2017年5月に百田センセイが『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に初出演したときのこと。番組冒頭の皇室議論のなかで、百田センセイは、今上天皇が生前退位の特例法などに不満を漏らしていたという5月22日付毎日新聞一面の報道について、「宮内庁否定したでしょ? 公式に否定したんでしょ」などとギャーギャー騒ぎ出したのだが、そこで司会の田原総一郎から、「あなたね、8月の天皇の『おことば』見た? 聞いた?」と聞かれると、なんと悪びれることもなく「聞いてない」とのたまったのである。
つまり、愕然とすることに、百田センセイは今上天皇が国民に直接語りかけた「おことば」のビデオメッセージも聞かず、知り顔で皇室について語っていたのだ。
ちなみに、当時の放送のなか、この百田センセイの「聞いてない」発言に対して、さすがに小林よしのりが「めちゃくちゃだよそれ」と嘲笑すると、百田センセイはビキッときたらしく「聞いてないだけやん!」と逆ギレ。だが、続いて小林から「『おことば』聞かずに語ったってしょうがないじゃないかそんなもの!」と一喝された百田センセイは、思わず目が泳ぎ、その情けない表情をカメラにバッチリ抜かれてしまっていた。
こういう皇室に対する理解や不勉強を鑑みても、この作家の“ナンチャッテ天皇主義者”ぶりは明らかだろう。しかし、こういう態度は、なにも百田センセイに限った話ではなく、安倍応援団の面々の多くに共通するものだ。
たとえば、2015年の誕生日に際した記者会見で今上天皇が踏み込んだ護憲発言をした際には、八木秀次氏が「宮内庁のマネージメントはどうなっているのか」と批判。ちなみに、八木氏は「神武天皇のY染色体を継承できるのは男系男子だけ」などと主張しているが、言わずもがな実際に男性のY染色体を辿って行き着くのは“神話”ではなく類人猿である。生前退位をめぐっても、安倍首相が有識者会議のヒアリング対象者にねじこんだ平川祐弘・東京大学名誉教授が、記者団にたいして「天皇はおかしい」とまで発言している。
ようは、普段、天皇主義者のツラをしている“ナンチャッテ国士”の安倍応援団たちは、実のところ「万世一系の天皇を戴く国体」なる時代錯誤かつフィクショナルな価値観を宣伝したいだけなのだろう。しかも、百田センセイにかんしては、肝心の「万世一系」の理解すらめちゃくちゃで、“皇室は不思議で理屈を超えた力をもっているから日本はすごい”というような、あまりに雑な話にもっていこうとする。あまりに低レベルとしか言いようがないではないか。
むしろ、百田センセイには今後もトンデモな発言を繰り返してもらって、連中の主張がいかに御都合主義にまみれたペテンであるかを、どんどん広めていってほしいものだ。
(宮島みつや)
最終更新:2018.12.26 12:27