それが26日、中谷の結婚の一報を打ったサンケイスポーツの記事だ。そこには2人の馴れ初めなどと共にこう記されている。
〈フェヒナー氏が拠点とするオーストリアと日本の距離は約9000キロだが、中谷は交際後、オーストリアへ飛び、彼の自宅で同居。仕事の度に日本へ帰るスタイルで世界を股にかける彼を支え続けた。
フェヒナー氏は、常に男性を立て、品のある“大和撫子”な中谷に惹かれ、結婚を決意。一方、今年4月期のTBS系主演ドラマ「あなたには帰る家がある」で夫に不倫される妻を演じ、結婚することに戸惑いを感じていた中谷も、女性を大切に扱うフェヒナー氏にぐんぐん惹かれていった。〉
フェヒナー氏が本当に“大和撫子”などと語ったのか、それ以前にこれはフェヒナー氏の言葉なのか、文章からはまったく不明だが、しかし、いかにもゴリゴリのオヤジタカ派の「フジサンケイグループ」らしい物言いだ。そしてこれに我が意を得たりと、ワイドショーも丸乗りし、飛びついた格好だ。
まさに勝手な思い込みと押し付けだが、しかし考えてみるとそれも当然だろう。なにしろマスコミこそが、旧態依然とした男社会なのだから。実際、スポーツ紙やテレビワイドショーでも、幹部だけでなく権限を持つデスクやプロデューサーの多くが男性で占められる。そのためパワハラやセクハラが横行している世界でもある。
たとえば元NHKの登坂淳一アナはNHK時代のセクハラが発覚し『プライムニュース イブニング』(フジテレビ)のキャスター就任が見送りになったが、代わりに『プライムニュース イブニング』キャスターになった反町理・フジテレビ報道局解説委員長にもパワハラ・セクハラ報道があった。さらにリニューアルした『news zero』(日本テレビ)でも、出演が内定していた青山和弘解説委員による性暴力問題が持ち上がり、直前に降板している。しかも、こうした卑劣なセクハラ・パワハラ問題が表面化しているにもかかわらず、新聞やテレビでは自社のセクハラ事件を決して報じようとはしない。こうして表沙汰になったのは氷山の一角、その裏に隠蔽され、女性が泣き寝入りしている事例はごまんとある。
そう考えると、今回の中谷“大和なでしこ”礼賛報道も、自分たちの願望をそのまま投影し、まるで男にかしずく中谷を演出し、矮小化した結果だろう。さらに悪質なものになると、中谷が過去に俳優の渡部篤郎と長い事実婚状態ののち別れたことを持ち出し、“渡部よりランク上の男性をゲットしてよかった”“リベンジ婚”などと、これまた女性蔑視も甚だしい視点で報じてもいる。
しかも中谷美紀個人が結婚しただけなのに、世界的音楽家の白人男性に「日本女性が認められた」「日本文化が認められた」と、なんなら“日本スゴイ”まで潜り込ませようというゲスさまで透けて見える。
あまりにグロテスクとしか言いようがないが、残念ながらこれが日本マスコミ、そして日本社会の悲惨な現状なのだ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2018.11.29 12:09