安倍政権の女性政策にも苦言!「一億総活躍と言われましても…」
ドラマのなかでも、メインストーリーの事件ではなく、サイドストーリーともいえる夫婦の関係を切り取る。しかも自戒を込めて。そして中谷は従来の日本男性にありがちな家庭での家事や育児を妻任せにする夫にたいしての皮肉を交え、それとは真逆のドラマの夫を“理想”と言っているのだ。さらにブログでは安倍政権が掲げた一億総活躍について、働く女性の目線でこう続ける。
〈一億総活役時代と言われましても、女性がますます苦しくなるような、そんな気がしてなりません。
家事を気軽にアウトソーシングできる制度が整い、子供や年老いた親を安心して預けられる場所が潤沢にあれば多少は異なるのでしょうけど、まだまだ追いついていないのが現状です〉
男社会の日本において女性が性役割を押し付けられている現状を冷静に指摘する中谷。
また中谷は、直筆の手紙にも〈日本を主戦場とする私は、お互いの文化に敬意を払いつつ、共に齢を重ねて参りたい〉と表明しているとおり、日本文化や日本的価値観だけをことさら誇るような人間でもない。
中谷が日本的価値観にとらわれない広い視野を持っていることは、ブログを見るだけでもわかる。今回話題になった達筆に限らず、中谷が着物や器など日本文化に造詣が深いことは事実だが、中谷が造詣深いのは何も日本文化に限ったことではない。仕事でもプライベートでも世界中の様々な地を訪れ、国籍や国境にこだわらず、様々なルーツのアートに精通している。とくに現代アートについては、作品の背景にある現代社会への問題意識も踏まえた鋭い論評を展開している。
アートだけではない。2017年9月に中国を訪れたことに関する投稿では、現在の中国の勢いに感嘆すると同時に、インターネット規制や格差拡大という負の側面にも触れ、さらには歴史問題を意識しつつ訪れた南京での現地の人と心を通わせたエピソードを綴る。その投稿だけでも、中谷がいかに国際情勢や社会問題について高い見識をもち、偏見にとらわれないフェアな批評眼をもっているかがよくわかる。
そもそも中谷は、女優として長年一線で活躍してきた実力派女優であり、エッセイなど文筆にも堪能。数年前には大手芸能事務所を独立し、個人事務所を立ち上げる。恋愛面においても渡部篤郎が前妻と離婚後も結婚にこだわることなく事実婚を貫き、その間シリアスな局面もあったかもしれないがパブリックには支障をきたすことなく変わらず仕事を続け、男性や恋愛だけに依存することなく旅行や美術鑑賞などの趣味も大事にする。どこをどう取っても、自立した個人にしか見えない。
そんな中谷に対し“大和なでしこ”などという安易な言葉で礼賛することこそ、あまりに失礼なレッテル張りとしか言いようがない。実際に中谷は3年ほど前の2015年、日本文化に関するトークショーで「私はお転婆。決して和美人でもないし、大和撫子でもありません」と自ら断言しているほどだ。
しかし今回の中谷に向けられた“大和なでしこ”なる表現は一部でフェヒナー氏が語ったかのように流布されているが、どうやらその元はあるスポーツ紙の記述にあるようだ。