子どもに夢を売るディズニーだが暗部が明らかに!(講談社刊)
「休むには代役を自分で見つけることが決まりだったので休みを取れず仕事を続けてきた」
「雨が降って着ぐるみが重くなっても、冬でも熱中症で倒れそうになっても続けてきた」
「グリーティングで指を反対に曲げられて怪我をしたが、上司からは『我慢しなきゃ』と言われた」
「過呼吸になり相談したら、『次倒れたらやめてもらう』と言われた」
“夢の国”での過酷な「過重労働」と「パワハラ」の実態が、法廷で語られた。
東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)でキャラクターコスチュームを着用してショーなどに出演していた契約社員の女性2人が、運営会社オリエンタルランドに対し、計約755万円の損害賠償を求め提訴したいわゆる「TDL着ぐるみ訴訟」。11月13日、千葉地裁で開かれた第1回口頭弁論において原告の2人が意見陳述を行った(オリエンタルランド側は請求棄却を要求)。
キャラクターの着ぐるみを着てショーやパレードに出演していた女性契約社員のAさん(29)と、勤務中にパワハラやいじめを受けていたとして、もう一人の女性契約社員Bさん(38)の原告2人は同日、千葉地裁での第1回口頭弁論に合わせて、会見を開いた。
Aさんは、キャラクターの着ぐるみを着てショーやパレードに出演していた。着ぐるみは重く(弁護団によると重いときで30キログラム)、十分な休息も取れない過密なスケジュールだった。2017年1月に「胸郭出口症候群」と診断を受け、同年8月、過度な業務による障害だとして労災認定された。症状が落ち着いてから職場に戻ったが、「まず謝れ」などと言われたという。そのため数日間は出勤したものの、出勤しようとすると涙が止まらなくなるなどし、現在は休職中で心療内科に通っている。
「自分では働く基準がわからず、大丈夫と思っていた業務量と内容で、過重労働と認定されました。再発の不安もあり、何度も会社側に交渉で改善を求めましたが、責任はないということでした」(Aさん)
一方、もうひとりの原告のBさんも、ディズニーで働くことが小さいころからの夢で、着ぐるみを着てパレードで踊るなどしていたが、2013年1月、ゲスト(来場客)により故意に右手薬指を反対側に折られたために負傷。しかし上司からは「君は心が弱い。エンターなんだから、それぐらい我慢しなきゃ」などと言われた。2016年1月6日、ショーの打ち上げの飲み会では、病気の相談をしたところ、ユニットマネージャーから「病気なのか。それなら死んじまえ」「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ」などといった暴言をはじめ、上司や同僚らからいじめや暴言などを5年間にわたり受けてきた。
「毎日悪口が飛び交い、いじめに耐えられず辞めていく同僚もいます。そういうことが許されてしまっている職場環境で最高のパフォーマンスができるのかと疑問に思いました。最初は、ゲストの夢を守るために裁判を起こすことを本当に躊躇しました。しかし、何度上司に相談しても変わらず、いじめはひどくなっていきました。このまま耐えるだけでは、なにも変わらない。私はこの仕事が大好きでディズニーが大好きでこの先もずっと続けていきたいと思っている。現在も続いているいじめをなくし安心して働ける職場になってほしいと裁判に踏み切った」(Bさん)
2人の所属する労働組合「なのはなユニオン」は2017年1月から計6回の団体交渉で、休業補償の検討などを求めてきた。昨年9月、12月、今年1月の交渉では、原告への謝罪や治療費の支払いのほか、演技と演技の間に30分ほどのクールダウンの時間を設けることや、復職プログラムの提示、業務の質量の改善、衣装の軽量化などの職場環境改善を求めた。しかしオリエンタルランドは、労災認定は認めた一方で、会社として安全配慮義務を怠ったわけではないと主張。提訴に至っている。
弁護団は、オリエンタルランド側の対応に「被告は非常に頑なで、誠意をもって応じる姿勢が見られないのが現状」と疑問を表明。さらに、2人には裁判の直前、同社から信じがたい書面が届いたという。
〈キャストには情報管理の徹底に関する社内ルールを守る義務があります。改めて社内ルールをご確認頂きますようにお願いいたします。なお、訴訟での主張内容に制限を求めるものではありませんので、誤解のないよう申し添えます〉
ようするに、事実上の口止め要求だ。