繰り返すが、これでもよくもまあ「バカにする空気は一切なかった」「すげえなーってみんなで盛り上がってただけ」と言えたものだ。というか、そういう意味では、昨日の謝罪放送での松本の発言は、言い訳に責任転嫁に自己弁護にウソと、ツッコミどころ満載だったのである。
が、しかし、冒頭で指摘したように、そのことにツッコんでいるメディアはいまのところほとんど見当たらない。スポーツ紙はそれどころか、冒頭で書いたように松本の言葉の好印象な部分だけを編集し、いさぎよい大物芸人のイメージをつくりだすことに躍起になっていた。ニュースサイトでも、そのデタラメ弁明を指摘するところはほとんどないし、有名人のツイッターなどがその矛盾を指摘したという話も聞こえてこない。これぞまさにオリラジ中田のいう「大御所」の力というヤツだろう。
吉本興業には絶対にさかえらえないテレビ、スポーツ新聞だけでなく、“お笑いのカリスマ”時代の幻影に縛られて、松本のことだけは批判してはいけないという空気が、言論の世界を支配している。
だから、松本がどんな失言をしようが、逆に及び腰になってみっともない態度をとろうが、ほとんど批判の声は出てこないのだ。中田が松本に絡んだ問題だって、本来ならが火をつけた『ワイドナショー』が今週、扱うべきだったが、一秒たりとも取り上げなかった。しかし、マスコミもネットもそのことを疑問視することはほとんどしない。
しかも危険なのは、この大御所が中田の言うように「おもしろいかおもしろくないかを決める」だけでなく、「共謀罪」や「安保法制」「安倍政権」への評価まで口にするようになっていることだ。ちなみに、昨日の『ワイドナショー』でも、加計学園問題をめぐる前川喜平前文科次官の問題について、松本は「菅官房長官のやり方が、ちょっと安倍さんへのかばい方がちょっと度が過ぎるというか、なんかちょっと、安倍さんの足を引っ張ってるかのような気すらしますね~」と、まったく本質からずれた珍解説を披露して、安倍首相をかばっていた。
古市はじめ『ワイドナショー』出演者たちは、前述のように、宮崎監督のことを「偉いからって言って批判しないのは本当によくない。それで衰えていく人が多いから」「偉すぎるから何回も引退宣言するんですよ」と揶揄していたが、だったら、まず目の前の“偉い人”にはっきりダメ出しをするべきではないのか。
(酒井まど)
最終更新:2018.11.04 10:27