BTSは現在、アメリカ10公演、カナダ3公演、イギリス2公演、オランダ1公演、ドイツ2公演、フランス2公演を含むワールドツアーを行っているが、どの都市でも数万人規模のアリーナやドーム会場ばかりなのにも関わらず、すでに全会場のチケートがソールドアウトしている。
もちろん、このワールドツアーには日本も含まれているが(東京、名古屋、大坂、福岡)、客観的に見ればいまのBTSにとって日本の市場は世界各国にまたがる数多い取引先のひとつでしかないし、そういったグループにとって「紅白出場」などたいした価値もないのは言うまでもないだろう。むしろ、なぜ忙しいカウントダウンのタイミングでそこまで重要とも言えない国の一番組のためにスケジュールを空けなくてはならないのか。BTSと世界の音楽産業をめぐる状況を概観できていれば当然共有されている認識が、まったく広がっていない。
今年2月、現在アメリカで最も人気のあるラップグループであるミーゴスが新木場スタジオコーストでのライブをキャンセルした直後、韓国のフェスに出演したのはその象徴的な例と言えるが、もはや日本は世界の音楽産業にとって重要な立ち位置にはない。スティーヴィー・ワンダーが紅白オリジナルソングを作曲していたような豊かな時代は終わったのだ。
そういった変化は、バブル崩壊以降の日本自体の経済的な力の弱体化もさることながら、日本の音楽業界および音楽ファンの考え方の孤立化・ガラパゴス化も無縁ではないだろう。
そして、そういった世界からの孤立は、秋元氏の歌詞をめぐる反応にも表れていると言える。
「Bird」および秋元氏に対して見せた韓国のファンの反応は過剰でもなんでもない。むしろ、国際的な基準から見れば当然のものといえる。
実際、グローバルな舞台に出るような場面で秋元氏と仕事をするということは、国際的な問題になる可能性を抱え込むことと同義である。
秋元氏の女性蔑視問題は上述した歌詞の問題だけにとどまるものではない。秋元氏は過去にも欧米諸国や東アジア各国から握手会をはじめとした疑似恋愛ビジネスを児童虐待や性的搾取として批判され続けてきた。その最たる例が、2013年に峯岸みなみが恋愛スキャンダルをスクープされた後、坊主頭になってYouTubeに動画を投稿したときで、その際は、BBC、CNN、ガーディアン、ABCなどの大手メディアが取り上げ、秋元氏がプロデュースするガールズグループの異様さを批判された。
東京オリンピックの開会式閉会式の演出を秋元氏が手がける可能性はひとまずなくなったが、もしも、秋元氏が手がけるようなことになっていたら、必ず上記のような問題が指摘され議論となっていたであろう。
むしろ、数えきれないほど問題を指摘されながら、今回のBTSとのコラボ中止のような展開にならず、秋元氏がいまだにJ-POP界におけるトッププロデューサーとして君臨している日本の意識こそ見直さなくてはならないものではないだろうか。
(編集部)
最終更新:2018.10.18 03:49