しかし、国内線を再開させたものの、出発便は関空が拠点のピーチ・アビエーションが6便、JALは1便のみ。関空へのアクセス手段は臨時シャトルバスと高速船だけで、朝のバス乗り場には長蛇の列ができていた。安全性やアクセスの確実性を考えれば再開はあきらかに時期尚早で、安倍首相がそうした問題を無視して再開をゴリ押しし、自分の手柄にしたのではないだろうか。
そもそも安倍首相は、近畿地方が台風21号の直撃を受けて一夜明けたばかりの5日、いまだ関空に約8000人が取り残されていたにもかかわらず、総裁選の票固めという私的要件のために新潟行きを強行。災害対応を放り出して3選のための選挙運動に勤しんだ。
このときも、自分は新潟へ向かったくせに、SNSでは〈25台のバスも既に関空内に到着し、まもなく大阪方面への移動も始まります〉などと発信。バスや高速船で取り残された人たちの輸送をおこなったのは政府ではないし、自衛隊の派遣さえ指示しなかったというのに、あたかも自分の手柄であるかのようにアピールしたのである。
これは安倍政権の大臣たちも同じだ。たとえば、世耕弘成経済産業相は関空の孤立問題で、5日の6時台に〈先ほど5時前に、関空ローソン店に、おにぎりとパンがそれぞれトラック1台分ずつ到着しました〉などと、政府が物資を運んで無料配布したわけでもないのにドヤ感丸出しで得意気にツイート。さらに、世耕経産相は北海道地震でも、地震発生から数時間しか経っていない状況で「北海道電力では復旧のメドがついていないが、数時間以内で復旧のメドをつけるよう指示を出した」と発表。北電が目処をつけられないのに数時間以内にやれと指示することはむちゃぶり以外の何物でもないが、実際、午後には「全域復旧までは少なくとも1週間以上かかる見通し」と後退させた。
安否不明者の救出や停電の復旧にあたっているのは現場の消防・自衛隊員や作業員であって、断じて安倍首相や世耕経産相の功績ではない。だが、それを政権アピールに使うことは、まるで火事場泥棒ではないか。
事実、安倍首相は災害対応に全力にあたると言いながら、石破茂氏が提案した総裁選の延期を事実上拒否し、3日間の選挙活動の自粛にとどめた。ほんとうに被災地の復旧が第一と考えるならば、このような対応にはならなかったはずだ。
「やってる感」の演出にだけ力を注いで、挙げ句、嘘の情報を流して混乱させる──。この政権に、危機管理を任せていていいわけがない。
(編集部)
最終更新:2018.09.07 08:59