今回の『検察側の罪人』に出てくる政権批判的要素は、こうした原田監督の危機感が反映されたものなのだろう。
実は、この原田監督の思いを意外な人物が受け止めていた。ほかでもない、主演の木村拓哉だ。キムタクは映画の公式パンフレットで、こう語っている。
〈原作にはない“インパール作戦”という戦争の要素を、原田監督が脚本のなかに練り込んできていて、正直驚きました。僕の考えでは、監督に膨大な量の知識があって、そのなかでもこれは監督個人において、一つの情報として置いておくことは許せない事項だったんじゃないかと思ったんです。その姿勢は今回のストーリーともリンクしているんですけど、要するにいまの社会にあって、ダメなことに目をつぶろうと思えばできますが、絶対そうしないぞという意志表示。それを脚本から感じましたね〉
昨年夏、インパール作戦を特集したNHKスペシャル『戦慄の記録 インパール』が大きな反響を呼んだが、ちょうど『検察側の罪人』撮影の最中に、キムタクもちょうどこのNスペを観ていたという。
9月3日、映画のヒットを記念して、木村と二宮ふたりそろっての舞台挨拶が行われたが、そのなかで、「また2人が共演するとしたらどういう設定で、どういう役で演りたいか?」というファンからの質問に、キムタクは「二宮が明智光秀で、自分が織田信長」と回答したのだが、その理由として「求められることに対して(作品を)作る、という作業が今の流れになってるでしょ? 時代ものって求められていない気がするんです」とマーケティングで作品を作るのが主流になっている現在、時代ものが作られづらくなっていると分析。そのうえで、こう語った。
「時代ものとか太平洋戦争の事実とか、(メジャーな存在である)自分たちしかできない」
SMAP解散騒動では、キムタクに批判的だった本サイトだが、この姿勢は高く評価したい。
いずれにしても、『検察側の罪人』での政権批判やインパール作戦の描写は、批判を受けるリスクを背負っても原田監督が伝えたかったメッセージでもある。ぜひ、映画館に足を運んでもらいたい。
(編集部)
最終更新:2018.09.05 01:14