お仲間たちからも批判された杉田氏(公式ツイッターより)
本サイトでも連日取り上げている、自民党・杉田水脈衆院議員のLGBTヘイト問題。多くの人びとから批判が集中し、杉田氏の議員辞職を求めるデモも自民党本部前で行われたが、当然だ。“LGBTは子供をつくらない、つまり生産性がない”と主張した杉田発言は、ナチスの優生思想や相模原事件を彷彿とさせる、極めて悪質かつ許してはならないものだからだ。
そんなか、ちょっと気になるのが、杉田氏と“同じ穴のムジナ”である極右界隈、安倍応援団の面々の反応。周知の通り、杉田氏は慰安婦問題の否定や朝日バッシングなどで、安倍首相を支えるネトウヨ文化人たちと意気投合。ネット番組などで盛んに共演するとともに、界隈から何度も「さすがは杉田さん!」と絶賛され、いつのまにかアチラの世界では、稲田朋美元防衛相から“2代目ネトウヨの姫”を襲名するレベルにすらなっていた。
ところが、そんな“杉田フレンズ”のネトウヨ文化人たちが、いま、まるで手のひらを返したように、Twitterなどで杉田氏を批判してみせているのである。
たとえば、杉田を極右政党・次世代の党時代から応援してきたネトウヨ作家・百田尚樹センセイ。百田センセイは、あからさまに問題をすり替えたり矮小化しつつも、こんなツイートで杉田発言を批判した。
〈「生産性がない」という発言も、乱暴で知的レベルが低い表現だが、それを極限まで拡大解釈して非難する方もどうかしてる。
たかだか1回生議員、「バカだね」と嗤う程度の発言〉
〈この問題に関して、人間を生産性という言葉でくくるのは乱暴で知的とは言えない。譬えでもね。〉(7月26日)
「乱暴」とか「知的ではない」とかよりにもよって百田センセイがよく言えたものだが、さらに、百田センセイはこれらの“杉田批判”に対し、ネトウヨから例の「全文を読め」なる反撃(笑)に晒されたらしく、こんなツイートまでしている。
〈私に対して、「杉田議員の寄稿文の全文を読んでから言え」というリプライを送ってきたひとが多数いるが、当然、全文を読んだ上で「生産性がない」という言葉の乱暴さを指摘している。
ただ、その発言を拡大解釈して非難する行為にも呆れている。〉
ネトウヨから攻撃されるネトウヨ作家って救いようがないが、ちょっと待ってほしい。百田センセイはいま、あたかも杉田議員のLGBTヘイトを批判する立場かのようなポーズをとっているが、いや、あんたこそ、これまでLGBTヘイトを繰り返してきたじゃないか。
たとえば百田は2015年3月、Twitterに〈同性とセックスしたいという願望を持つのは自由だと思うが、そういう人たちを変態と思うのも自由だと思う〉なるむき出しの同性愛差別を投稿。大きな批判を受けて削除したが、百田の差別思想はまったく変わっていないようで、今年7月5日には、お茶の水女子大学がトランスジェンダーの学生の受け入れ方針を固めたと伝えるNHK報道についてこう嘲笑した。
〈よーし、今から受験勉強に挑戦して、2020年にお茶の水女子大学に入学を目指すぞ!〉
〈ふと思うんだが、女性同士でも愛し合うカップルがいる。ということは、体は男性だけど心は女性という人が、女性と愛し合うことがあっても不思議ではない。しかし、それって、外から見てると、ふつうに男と女のカップルに見えるよなあ。〉(百田氏のTwitterより)
性自認を男性と公言している百田が「女子大を目指すぞ!」と宣言することは、明らかに「自分の性自認を偽って女子大に入り込む不逞な輩がいるかもしれない」「トランスジェンダーの人は性自認を偽っているのではないか」という偏見を助長する。しかも、百田は「ふつうに男と女のカップル」などと言って、旧来的な「男」「女」のジェンダー役割や「異性愛がふつう」という偏見をすべての人に強要・喧伝し、そこにはまらない多様な性のありようや心の機微など取るに足らないこととして切って捨てているのだ。これは性的マイノリティ排除、差別以外の何ものでもない。
ようするに、つい最近もそのグロテスクなLGBTに対する差別思想を振りまいた百田が、今回、杉田の“LGBTは生産性がない”発言に表向きダメ出しをしたのは、市民や有識者やからの大批判を受けて、自民党からも杉田を切り捨てる動きが出ていることに便乗しただけにすぎない。そういうことだろう。