〈ある日、「Badi」の撮影で九十九里浜に出掛け、待ち時間にロケバスのなかで担当編集のマツコさんとおしゃべりをしていました。
「お前、絶対AV男優になれ!」
「AV男優にならないと、将来、犯罪者になるぞ!!」
と、延々と「AV男優になれ!!話」が続き、「このままゲイのグラビアをやっていても、AV男優にはなれない」と知らされたのです。
このとき初めて、ゲイとAVは別の業界だということを教えられました〉
もしも、この時マツコが真実を教えなければ、いま我々が見ているAV男優しみけんの姿はなかったのかもしれない。──そんな恩人であるマツコ・デラックスではあるが、しみけんは一度、マツコに殺されかけたことがあるそうだ。
〈当時の「Badi」では、なぜか「野外もの」の撮影が多く、首都高を走る軽トラックの荷台でふんどし一丁になり、トラック野郎のようなグラビアを撮ったこともあります。高速道路なのでスピードも出ていて危険だということで、モデルの僕が荷台から落ちないように腰縄をつけて、「これで大丈夫だから」と撮影に臨みました。ところが、無事撮影を終えて腰縄をほどこうとすると、縄の端っこがどこにも繋がれてない!? 「全然、大丈夫じゃない!」とひっくり返りましたが、このとき腰縄を結びそこねたのが当時「Badi」の編集をしていたマツコ・デラックスさんでした〉
そんなトラブルがありつつも、しみけんは、AV男優への道を開いてくれたマツコをメンターとして信頼するようになる。
その後、しみけんはスターAV男優の道へ、マツコ・デラックスはコラムニスト・タレントへの道へと、別々の道を歩いていくことになるのだが、親密な関係は15年以上にわたって続いていく。
「週刊新潮」(新潮社)2012年6月21日号で、マツコ・デラックスは、しみけんとの関係をこう語っている。
「私が(ゲイ雑誌の)「Badi」で編集者をしていたころ、彼がモデルに応募してきたのがきっかけよ。いろんな話をしているうちに、彼はセックスが純粋に好きなんだとわかったわけ。AV男優に向いていると思って、そう話したわ。今やトップ男優だから、私の人を見る目も間違ってないって思ったわよ。以来、15年も関係は続いているわよ」