談合疑惑の「平瀬ダム」工事現場(撮影・横田一)
2014年5月26日の日付のある捜査資料にはこんな文言が並んでいた。
〈平瀬ダム建設工事の入札は4社JVで、清水建設が落札しているが、当初は、熊谷組が落札するはずだったと聞いた。これは、熊谷組の関係者から聞いた話である〉
〈熊谷組は、本社のトップ営業をしていたが、途中から、清水が営業をかけはじめ、これによって、JVの頭がすげ替わった。熊谷から清水へと頭が替わったのは、余程のことがあったと思われる〉
〈熊谷の関係者も『今回は、今までにないようなことがあった』、『うちは、清水の真似はできなかった』と話していたので、相当多額の金が動いたのは間違いない〉
〈ナルキは、民主党政権時代は、仕事が無く、重機を売ったりして、傾きかけていたが、自民党政権になって息を吹き返し、平瀬ダム工事では、どこが落札してもチャンピオンに引っ付くことになっていたようで、最初はJVにも入らないはずだった〉
〈清水から、畑原、畑原から担当部署、県トップクラス等に働き掛けが行われ、多額の金が動いた〉
こうした情報提供者の情報を列挙した後、「今後の方針」がこう記載されていた。
〈提報者の言動等から、同人は、上記提報内容以上の情報を持っていることが予想され、引き続き提報者との接触を継続の必要性が認められる〉
また、この捜査資料には、故・畑原県議が県土木部職員らを温泉宿や高級クラブで接待していた内容も記されていた。捜査対象となった県職員の経歴や携帯電話も調べ上げていたのだ。
この捜査資料の信ぴょう性は高かった。住所の書かれていた業界事情通の提報者(捜査協力者)の自宅を筆者が訪ねると、本人が出てきた。また、県職員への接待について情報提供をした別の捜査協力者を訪ねると、複数の県警担当者の名刺を出してきて、その名前が捜査資料にある報告者と一致した。さらに県議(当時)の話を報告していた県警職員も、実在の人物であることが確認できた。