『負債論』は、この世界の支配者が〈社会運動が成長し、花開き、代案を提示できることなどゆめ考えたりしないようにする〉ために、ありとあらゆるプロパガンダ機関を網羅する広範な装置を用意し、〈オルタナティブを直接攻撃するというよりも、恐怖と愛国主義的順応、そして世界を変えるというどのような思考も無駄な空想でしかないという絶望感の入り交じった空気をつくりだし、浸透させる〉と指摘している。しかし、やたら「個人の努力」や「責任」を強調し、自殺するほど追い詰められた弱者にまで「政治のせいにするな」と説教する本田の行動はまさに、グレーバーの言う「社会運動やオルタナティブを考えさせないためのプロパガンダ」そのものではないか。
そう考えると、本田の『負債論』推しは、ユダヤ陰謀論にはまった延長線上で、確証バイアス的に欧米の資本主義批判として読んでいるだけなのかもしれない。それどころか、ファシズム的な反資本主義思想の補強材料として読んでいる可能性も……。
いやいや、本田センセイが常日頃、自己啓発トークで熱く語られているように、ネガティブ思考はいかん! SNSなどから想像するに、本田が『負債論』を読み始めたのは今年に入ってから。もっと本格的に『負債論』を読み込み、グレーバーの思想をさらに深く理解すれば、これから反格差、反グローバリズムの旗手になってくれる可能性もある。W杯後のケイスケホンダにぜひ、期待しようではないか。「夢を叶える可能性があるかどうかは、あなた次第」(by本田圭佑)。
(高幡南平)
最終更新:2018.06.27 09:59