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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第19号 

竹中平蔵だけじゃない!「残業代請求は、権利の乱用」とトンデモ主張する経営者たち…必要なのは高プロでなく使用者教育だ!

 また、壮絶な誤解をしている社長さんもいらっしゃる。その例を2つ紹介しよう。

 1つめ……
「うちは36協定をきちんと結んでいるから、そこで定めた上限いっぱいまでなら、残業代を払わなくても残業させていいのだ!!」

 おわかりのことと思うが、上記のとおり、36協定の効果は、そこで定めた上限まで残業等をさせても、刑事罰を科されないという免罰効であって、残業代を払わなくていいという民事効は生じない。国会で議論されようとしている、残業時間の上限規制の問題は、この36協定でも規制できていない、罰則付きの「上限」に関する例外(1日8時間などの法定労働時間を「原則」とすれば、いわば「例外」の「例外」)に法律の枠をはめようというものである。従って、36協定で残業時間の上限を定めたからといって、労働者を残業させた以上、使用者は残業代を支払わなければならない。

 2つめ……
「労働者が、自ら残業させて欲しい、土曜も日曜も働きたいと言っているのだから、これは残「奉仕」(もしくは歩合給稼ぎのための請負)であって、残「業」ではない!!」

 これもおわかりのことと思うが、労働と奉仕活動・ボランティアとは違う。法的には、使用者の指揮命令に従って、労働者が労務を提供している以上、賃金が支払われるべき労働時間になる。指揮命令の有無は実質的に判断され、使用者側が直接残業を命じていなくても、残業している実態を黙認していれば、それは使用者の指揮命令下の時間、すなわち労働時間に当たるということになる。「サービス残業」というものは許されない。まあ、労働者の方でも進んで会社にサービスするつもりのサービス残業なんてあり得ないと思われるが……。ちなみに、売上等に応じて支払われる、いわゆる歩合給・請負給の定めがあったとしても、歩合給部分について残業代を支払わなくていいというわけではない(時間単価の計算が、所定労働時間ではなく総労働時間に基づくという違いだけである)。

 以上のとおり、法律の枠組に関する理解不足(曲解・牽強付会を含む)から、法律家が参加した事件においてですら、ビックリ仰天な主張がされていることからすると、実際の労働実態はもっとすさまじいものがあるのではないか(本連載第12号https://lite-ra.com/2018/04/post-3946.html)によると、「うちは法定休日ないから」という社長さんがいたようである)。いまこそ、労働者のみならず、使用者に対しても「ワークルール」を学ぶ機会を与える、「ワークルール教育」の実践が必要なのではないか。ワークルール教育を国や行政、事業主の責任で実践する、ワークルール教育推進法の早期成立を祈念して、私からの報告とさせていただく。

【関連条文】
安全配慮義務→労働契約法5条
労働時間規制→労基法32条、35条~37条

(金子直樹/早稲田の杜法律事務所http://wasedanomori.com )
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ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


最終更新:2018.07.03 12:10

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