そういう意味では、今回のRADWIMPS野田洋次郎の「HINOMARU」はなにからなにまでネトウヨ的とも言えるだろう。歴史や伝統に関する知識もなく、国家についてまともに考えたこともないくせに、国家の威信とは何の関係もないスポーツをきっかけに、自尊心を国家に仮託し始め、「日本すごい」の自己陶酔と自己慰撫に拘泥し、戦前戦中の軍国主義的な言葉を「かっこいい」と連呼し始める。
その幼稚な精神性には呆れ果てるが、しかし、それは幼稚だから無害ということではない。むしろ思想的な背景がまったくない、浅薄で無根拠な「日本すごい」だからこそ、簡単に戦争の美化=歴史修正主義や他国への差別と排除=ヘイトスピーチに転化しうる。
しかし、だからといって、「HINOMARU」という楽曲やRADWIMPSというバンドのライブに対して、謝罪しろとか、撤回しろという抗議をおこなうことは逆効果でしかない。和田政宗の反応が象徴的なように、むしろ愛国を扇動したい連中に「言葉狩りだ」と逆利用されるのがオチだろう。
わたしたちが向き合うべきなのはそこではなく、スポーツで日本のチームを応援したい、自分が生まれ育った日本が好きという素朴な感情が、歴史修正主義や戦前的な軍国主義、ヘイトスピーチに転化する回路がどこにあるか、それをどう断つかということ。そのことを真剣に考えないかぎり、「HINOMARU」的なものは、それこそ「右でも左でもない普通の日本人の想い」として、今回のW杯以降さらに広がっていくことになるだろう。
(宮島みつや)
最終更新:2018.06.17 06:00