しかし、これは氷山の一角に過ぎない。先に述べた通り、三田アナは番組内で「痴漢に遭ったら声も出ないし、動きもできないですし、ただ震えて涙が出てくる」と指摘したが、そういった状況が起こることは調査からもわかっている。同報告書のネット調査では、「過去1年間に電車内で痴漢被害に遭った」と回答した女性304人のうち、「痴漢被害に遭っても警察に通報・相談していない」と答えた人は271人。つまり、約9割の女性が「泣き寝入り」しているのだ。
痴漢という女性を狙った男性による「犯罪」が後を絶たない。そういう状況下で鉄道会社は女性専用車両を導入しているわけだが、それはけっして根本的な解決策ではないことは言うまでもない。あくまで通学・通勤のたびに犯罪リスクに晒される女性たちに対する、最低限の安全措置でしかないのだ。だいたい専用車両は、「男性を排除」するというより被害者である女性を「隔離」するもので、痴漢を容認する対策だという批判もある。
男性というだけで乗車できない車両があることを「男性差別」と言うのならば、この状況をつくり出している痴漢犯罪者を憎むべきで、女性専用車両を非難するのはお門違いだ。女性専用車両に反対する前に、やれることはたくさんある。痴漢を含む性犯罪のさらなる厳罰化、警察と鉄道会社の連携強化を訴えることもできるし、男性たちがそうして連帯してくれることを、女性たちは大いに歓迎するだろう。
また、女性専用車両を批判する声として「普通の車両はひどい混みようなのに、女性専用車両は空いていてずるい」というものがある。これも同じように、憎むべきは、殺人的なラッシュをつくる要因となっている日本企業の働き方や交通システムであり、女性専用車両に問題を押し付けるのは違う。
また「女性専用車両に乗ることは違法ではない」というのをタテに、件の男性らは女性専用車両に乗り込み居座っているが、鉄道会社の対応も弱腰すぎるのではないか。
『グッディ!』では、「女性専用車両は男性平等に反するのではないか」という問題が過去に裁判で争われたことがあることを紹介していたが、これについては、2011年7月に東京地方裁判所により「平日の通勤時間の一部、しかも6両の車両のうち1両のみで、男性が目的地まで乗車するのを困難にするものではない」として「鉄道会社による女性専用車両の設置は妥当」との判決がくだされている。だから、鉄道会社各社も、もっと毅然とした対応をしてもいいはずだ。
それにしても、本稿で挙げてきたこれらのことは別に理解するのが難しいことでもなんでもない。こんな明らかなミソジニー、ハラスメント行為には、メディアも「どっちもどっち論」で語るのでなく、三田アナのように毅然とNOを突きつけるべきだろう。
(編集部)
最終更新:2018.03.01 10:08