しかし、こうした現実を無視し、デマを喧伝する政治家、ジャーナリスト、評論家は後を絶たず、デマはどんどん事実と認識されて広がっていった。日本の右翼テロはマスヒステリーがきっかけになることが多いが、今回のテロも明らかにこのデマに誘発された「テロ組織の朝鮮総連なんてやっつけてしまえ」という世論の広がりに後押しされた部分がある。
しかも、このテロを生み出す憎悪の扇動はテロが起きてしまった後も変わっていないどころか、さらに激しくなっている。ネット上で桂田容疑者の犯行を称賛し、総連を攻撃する意見が溢れていることは先に紹介したが、マスコミ報道も大差がない。
たとえば、今回の事件を報じたNHKは、銃弾が撃ち込まれた朝鮮総連中央本部について〈北朝鮮と在日朝鮮人とを結ぶ「事実上の大使館」〉と説明。さらに、ご丁寧にもこんな解説まで付けた。
〈地上10階、地下2階の建物の中には、キム・イルソン(金日成)主席の誕生日を祝う催しなどが開かれる大会議室や、議長や副議長ら幹部の執務室が置かれていました〉
テロがおこなわれた状況で、わざわざ強調することなのか。まさに「テロの標的になっても当然」といわんばかりではないか。
マスコミがこの調子では、これからさらにテロはエスカレートするだろう。今回のテロは、対象が総連という組織だったが、この先、米朝関係が再び緊張状態に陥り、戦争可能性が高まっていくにつれて、その銃口は「在日朝鮮人」に向けられる可能性が高い。
実際、右派言論は完全に「在日朝鮮人」排除に広がっている。たとえば、昨日の衆院予算委員会では、ネトウヨ発言で知られる安倍チルドレンの山田賢司・自民党衆院議員と法務省、外務省の間でこんな質疑応答が繰り広げられた。
山田「日本にはサンフランシスコ講話条約で日本国籍を喪失した韓国籍・朝鮮籍と呼ばれる方々がいます。このうち大韓民国の国籍を保有する方は韓国籍として、それ以外の方はどこの国民に当たるのか」
法務省官房審議官「朝鮮半島出身者と台湾出身者になります。出入国管理で使う用語としての『朝鮮』は、朝鮮半島出身者のことで、国籍を意味するものではない」
山田「彼らは北朝鮮を『祖国』と言い、北朝鮮も『同胞』と言っている。北朝鮮でないのなら、無国籍なのか」
法務省官房審議官「日本国として北朝鮮を国として認めていないことから、無国籍です」
山田「北朝鮮を国として認めていないから北朝鮮国民がいないってことになると、北朝鮮国民に対する核開発関連の教育訓練をするなという安保理決議が全く意味がなくなる」
さらに山田は外務省に対して「朝鮮大学校で物理工学や情報工学の授業を行っていることは、決議違反ではないか」「我が国国内において、北朝鮮国籍者に対して労働許可を提供しないことをどのように担保しているのか」「朝鮮籍の人が北朝鮮籍者かどうかわからないということであればこの制裁を履行徹底するっていうことは出来ないんじゃないか」などと詰め寄った。
ようするに、山田は韓国籍を選ばなかった在日朝鮮人をすべて「北朝鮮国籍」と決めつけて、教育や労働の機会を奪い、日本から排斥しようとしているのだ。繰り返すが、山田は安倍首相の子飼い議員である。このままいくと、オーバーではなく、本当に在日朝鮮人への「ジェノサイド」が起きかねない。
(編集部)
最終更新:2018.02.24 12:27