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柳広司、中原昌也、松尾スズキ、恩田陸、赤川次郎…高まる“オリンピック圧力”に抗い、東京五輪に異を唱える作家たち

 中原が指摘する「代理戦争」の気味悪さを松尾スズキ氏も指摘する。

 彼は、エッセイ集『東京の夫婦』(マガジンハウス)のなかで、睡眠時間を削ってまでオリンピック中継に夢中になり、「内村航平くんなんかすごい頑張ってるじゃないの!」と熱弁する共演者の話を聞いた感想をこのように綴っている。

「それだ。オリンピックに夢中になっている人すべてのその論理ですよ。
 いやいや、だって、僕だって、頑張ってるじゃないですか! 頑張っておもしろい芝居作ってるじゃありませんか。でも、誰も徹夜するほど夢中になってくれませんし、国費で海外に連れてってくれたりしませんよ。もっといえば、日本人全員が、おのおのの持ち場で頑張って生きてますよ! だけど、赤の他人は夢中になってくれるどころか知りもしませんよ」

 いかにも最近の松尾スズキらしい自虐と嫉妬に溢れている文章だが、オリンピック選手に対し「頑張ってる」という理由で応援を強いる同調圧力に対する違和感がよく表れている。このエッセイが書かれたのはリオデジャネイロオリンピックでの出来事がきっかけだが、東京オリンピックが開かれるときにはこの同調圧力が数百倍の強さで迫ってくることだろう。

 そういった同調圧力とナショナリズムの高まりによって生まれる戦争への危機感を小説のテーマにした作家がいる。

 昨年出版した『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)が直木賞と本屋大賞をダブル受賞するという史上初の快挙を成し遂げた恩田陸氏である。恩田は今年2月、直木賞受賞後第一作目となる小説『失われた地図』(KADOKAWA)を出版したが、その作品がそれだ。

 この小説は、時空の裂け目から出現する「グンカ」という化物(茶色がかった軍服に赤い星のついた帽子をかぶっているなど、太平洋戦争中の日本兵の幽霊なのではないかと思わせる描写がなされている)と戦う若者たちを描いたアクション。

 この「グンカ」は戦争の機運やナショナリズムが高まってくると、どんどん勢いを増す化物として描かれているが、物語のラストではオリンピックのシンボルとともに大量の「グンカ」が現れ、ついに主人公たちは手も足も出せなくなってしまう。

 このようなシーンが描かれた内幕について、恩田はウェブサイト「BOOK SHORTS」のインタビューでこのように答えている。

「オリンピックの開催地が東京に決まったときには、これでまた東京大開発だし、ナショナリズムが……とすごく嫌な気持ちになりました」

 東京五輪の開催まで3年を切った。もうすでにこの国に大量の負の遺産を残しつつあるが、開催までの3年、そして五輪が終わったあとも、さらに国民を苦しめることになるのは明らかだ。

 大量の血税を投入し、建設や運送の現場にはブラック労働を強制し、挙げ句の果てには共謀罪のような悪法までつくらせてしまう。いまからでも間に合う。東京オリンピックなど返上するべきだ。

最終更新:2017.11.20 09:05

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