次々と出てきている新証言も相撲協会が手を回しているにおいがぷんぷんする。そのひとつが、16日になって唐突に飛び出した白鵬の証言だ。「手を出したのは事実」としながらも、「ビール瓶で殴っておりません。ビール瓶を持ったのは持ったけど滑り落ちました。その後に私が間に入って(日馬富士を)部屋から出しました。その場で貴ノ岩関が日馬富士に謝ったし、次の日の巡業(10月26日の鳥取巡業)でお互いに謝っていた」「馬乗りになったのは事実ではない」と語ったのである。
また白鵬は、4~5年前に貴ノ岩が問題を起こした際、貴乃花親方から「弟子をかわいがってくれ」と頼まれたことがあったと明かし、「気合を入れるためにたたくこともある。普通の光景」と稽古のかわいがりと今回の暴行を同一視するような発言もした。
「ビール瓶を持ったけど滑り落ちた」など、いくらなんでも無理がありすぎるだろう。貴乃花親方から「弟子をかわいがってくれ」と頼まれたことがあるという話も、今回の事件とはまったく関係ない、ただの印象操作としか言いようがない。
昨日、警察による事情聴取を受けた日馬富士も暴行の事実を認める一方、「ビール瓶では殴っていない」と答えたが、白鵬がその直前になって、こんな重要な証言を口にしたというのは、その間に協会や日馬富士、同席した関係者らと口裏を合わせた結果なのではないか。
17日には、マスコミが「診断書が2種類あった」「相撲協会に提出した診断書には「骨折」とあったが、その前に警察に提出した診断書には「骨折」はなかった」と報じたが、診断書が2種類あったというのをことさら非難するのもおかしい。
警察に出された診断書は事件直後の10月26日のもので、相撲協会に出された診断書は11月9日のもの。おそらく診察した医師も別の人間と思われる。頭蓋低骨折はCTなどを使わなければ診断できず、どこの病院でも診断のつくものではない。その場では切り傷など目に見える外傷だけ手当して、その後回復しないことから精密検査をして症状が見つかるということは十分あり得ること。
さらにきのう17日夕方になって、頭蓋低骨折の診断書を出した医師が相撲協会を通じて「骨折と髄液漏は“疑い”にすぎない。全治2週間というのは、負傷してから2週間という意味。相撲も含めて仕事に支障はないと判断した。重傷のように報じられて驚いている」などとする見解を表明した。
しかし、診断書には「上記傷病にて平成29年10月26日に受傷し、11月5日より11月9日まで当科入院加療を実施しました。全治2週間程度と考えられます。その間に状態が安定すれば、仕事に復帰が可能と思われます。」とある。もう全治しているという認識なのに「その間に状態が安定すれば」という仮定の表現をするだろうか。
また「骨折や髄液漏」が仮に疑いに過ぎなかったとしても、少なくとも「脳しんとう」については確定診断をしている。脳しんとうは、時間差で症状が出ることがあったり、数日〜30日後くらいのうちに2回目の頭部外傷を受けるとそれぞれ単独の外傷は軽度であっても致命的な損傷を引き起こすセカンドインパクト症候群の怖れもある。とくに格闘技やコンタクトスポーツでは練習再開にも慎重になるのが一般的だ。それを「相撲を取ることも問題ない」などと医師が軽々に判断するだろうか。
いったいなぜ、この医師は自分の診断の信用性をなくするような発言をおこなったのか。実は、この医師の周辺には、相撲協会関係者とつながっている人脈があり、そこから圧力をかけられたのではないかといわれている。