確かに、音楽教室に大人がいないとは言わないが、「大半は大人」という説明にはどう考えても違和感しかない。しかも、仮に生徒が「大人」だったとしても、大人たちが楽器を習うことは、音楽文化の裾野を広げていくことに大きく寄与するはずだ。つまり、JASRAC会長の頭のなかはいかに金をふんだくるかだけで、音楽文化の普及などという観点はまったくないのである。
しかし、そもそも、なぜ最近になってJASRACまわりで問題が立て続けに起きているのか? 「ミュージック・マガジン」17年4月号では、JASRACをめぐる最近の現象について、〈JASRACが徴収対象を広げてきた背景には、CDのセールスの落ち込みにより、レコード業界からの著作権収入が減少したことがあるとされる〉と説明されていた。
こういった背景は確実に存在するだろう。しかし、だからといって、その分の補填を音楽教育の現場からの徴収でまかなおうとするのはどう考えてもおかしい。
前述『バラいろダンディ』にて、宇多丸はそのあたりの裏事情をほのめかしつつ、代々木上原にあるJASRACの本部ビルおよび古賀政男音楽博物館の名を挙げてこのように皮肉っていた。
「CDによる著作権の売上が下がって取りどころを新たに開拓しようとしているのかなと思うと、あの立派な古賀政男記念館をちょっと整理するとか、ね」
音楽教室からの著作権料徴収をめぐる問題については今後も議論は続いていくと思われるが、音楽文化にとって前向きな結果となってくれることを切に願う。
(新田 樹)
最終更新:2018.10.18 03:57