周知の通り、JASRACに関わる炎上騒動はここのところ立て続けに起きている。
今年5月には、京都大学のホームページに掲載された山極壽一総長の入学式の式辞に、ボブ・ディランの代表曲「風に吹かれて」の歌詞の一部が引用されているとして、JASRACが大学側に対し楽曲使用料が生じると指摘していた旨が報じられた。
結局、大炎上した挙げ句、JASRAC側はこの件に関しては頑として徴収を訴えるようなことはなかったが、引用した出典の記載もあり、どこからどこまでが引用なのかの区分も明確で、「自己の創作部分が主であり、引用部分が従であること」という引用の要件も満たしている式辞に対して威嚇のような指摘をしていたということには、各方面から驚きの声が漏れた。
また、先月には爆風スランプのドラマーであるであるファンキー末吉氏が、著作権料の作曲者らへの分配を適正にしていないとして、調査と業務改善命令を出すよう求める上申書を文化庁に提出したと報じられたのも記憶に新しい。
ファンキー末吉氏は会見を開き、著作権料がきちんと著作者に支払われていないと主張。その根拠として、自分自身も爆風スランプなどで2000年からの10年間に全国のライブハウスで204回のライブを開き自分が著作権者となっている楽曲を演奏したが、それに対する分配が1円も入っていなかったと語った。
このようなことが起きた原因は、JASRACがとっている「包括契約」という方式にある。この契約では、ライブハウス側は使用された楽曲を一曲一曲報告して個別にJASRACに払うのではなく、決まった額を包括使用料として支払うことでJASRAC管理楽曲を自由に使う許諾を得ることになる。その際、JASRAC側は、すべてのお店に人員を配置して何の曲が歌われたか調べるといったことはせず、一部のモニター店での演奏実績を基準としたサンプリング調査で徴収した著作権料の分配を決める。だから、そのサンプリング調査の網の目から漏れた場合、ファンキー末吉氏のようなケースが起こるのだ。
つまり、本稿冒頭で記した口頭弁論で「一円たりとも創作者に還元しないのは極めておかしい」と主張していたその裏で、JASRACは著作権料の公平な分配に関して不備のある仕組みを放置していたということになる。