しかし、青山氏の支持者たちはそんなことはまったく気にしない。どんな記者が追いかけても掴めない事実を各国の要人やインテリジェンスからもたらされている青山氏は、「世界の真実を知るすごい人」であり、そうした人びとが青山氏を教祖よろしく絶対視して信仰を深めている、そういう絶句するような“界隈”が、この世に存在しているのだろう。
それを象徴するのが、今年1月に京都のギャラリーで行われた、ある展示だ。そのタイトルは、「現代アートに挑戦する青山繁晴展」。青山氏の初の個展である。入場料は無料だったこの個展で展示されたのは、青山氏の手によるアート作品。〈現代アートに挑むにあたって、まずは現代アートこそを壊したいと考えました〉という青山氏だが、その作品はまさに衝撃の連続だ。
たとえば、KISSのアルバム『DYNASTY』のレコード盤の中心に朱色で「壊せたか」と記す青山氏。崎陽軒の「特製シウマイ」についてくるシュウマイ乾燥防止の紙に「武士道といふは死ぬことと見つけたり」と綴る青山氏。やはり食べ終わったあとの何かの弁当箱に「脱私即的」と書く青山氏。──どの作品も青山氏のパッションが溢れすぎて、言葉を失う。
しかし驚いたのは、美大なら提出したとたん、合評で「現代アートを壊すも何も現代アートっぽさをなぞってるだけだ」と確実にコテンパンにされるだろうこれらの作品が、なんと販売されていたことだ。しかも、小さなキャンバスに筆で目が描かれただけの作品の価格は、なんと16万2000円。これが初個展であるにもかかわらず、ずいぶんな価格設定ではないか。
また、ラコステのポロシャツの両襟に「朋」「誠」、ボタン下に「祈」と記した作品には、「真夏の遊説のポロシャツが、一度は終えた命を甦らせる。朋の胸で。」という解説(?)が付いていた。つまり、青山氏の汗をずいぶん吸い取ったであろうポロシャツに文字を入れただけのものが「アート作品」として販売されていたのである。
こんな酔狂な催しを成立させてしまうとは、青山センセイ、恐るべし。「世界の真実を知る青山繁晴」という信仰の前では、本サイトの記述が「見ているものが違う」と批判されるのもいたって当然なのだろう。
本来なら、その間違いをきちんと念押しして原稿を閉めたいところだったが、正直、この「現代アート」を見て、その気力まで萎えてしまったのだった。
(編集部)
最終更新:2017.12.06 03:49