岡田麿里『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文藝春秋)
『あの花』と『ここさけ』で描かれたひきこもりの設定
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』と『心が叫びたがってるんだ。』。それぞれ人気テレビアニメシリーズであり、大ヒットアニメ映画だが、実は両者の作品には共通点が2つある。
ひとつは、両方とも同じ脚本家によって書かれているということ。そしてもうひとつは、ストーリーの核となるテーマとして「ひきこもり」が描かれているということだ。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』)の主人公・宿海仁太(じんたん)は、幼なじみと母親の死や高校受験の失敗などが重なり、登校拒否に。普段は家に引きこもってゲーム三昧、用があって外出せざるを得ないときはニット帽や眼鏡で変装。偶然知り合いに遭遇すると慌てて逃げたり目をそむけたりする人物として描かれている。
また、『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)の主人公・成瀬順は、幼少時に自分のおしゃべりがきっかけで父の不倫を母に悟らせてしまい、結果として両親は離婚。そのトラウマから声を出して話そうとすると腹痛に襲われるようになってしまう。一応高校には通っているものの、一言も話さないので当然友だちもおらず、クラスメイトからはのけ者にされている。
この2つの作品に共通する「ひきこもり」というテーマは、実は脚本を務めた岡田麿里の実体験を色濃く反映させたものだった。彼女の自伝『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文藝春秋)では、なぜひきこもる学生生活を送ることになったのか、そしてどうやってそこから抜け出すことができたのかを赤裸々に綴っている。