山本雄二著『ブルマーの謎 〈女子の身体〉と戦後日本』(青弓社)
「ブルマーはソ連のバレー選手への憧れで広まった」は嘘
小学校、中学校、高校と、女子生徒にのみ着用が強制されてきた密着型ブルマー。パンツと同じかたちで、かつ下半身にぴったりと張り付くために、お尻や下腹部のラインがくっきりする、およそ学校の教育現場で使われるものとは思えないような体操着だ。
現在では学校現場から完全に姿を消し、風俗やアダルトビデオの世界でしか存在しないものとなっているが、しかし、当時はこれがなぜか「普通」で、どんなに教員に「恥ずかしいから嫌だ」と抵抗しても、着用を拒むことは許されず、ほとんどの女子学生がはかされていた。その時代に青春を送った女性のなかには、「なんでこんな下着のような格好をさせられなければいけないんだ」と理不尽に思った人が多いのではないだろうか?
実際、こんなエロ目的としか思えない体操着がなぜ、普及し強制されるようになったのか。
その疑問を真面目に考察した本が、教育社会学を専門とする関西大学社会学部教授の山本雄二氏による『ブルマーの謎 〈女子の身体〉と戦後日本』(青弓社)だ。同書は、数々の資料にあたりながら密着型ブルマーの隆盛と消滅の真相を暴き出している。
1960年代に爆発的に普及し、1990年代に入って消えてしまったブルマー。学校で密着型ブルマーが普及し始めたのは東京オリンピックが開かれた1964年の直後であることから、「女子バレーボール決勝戦で日本と優勝を争ったソ連の選手たちの着用していた密着型ブルマーに憧れたから」という都市伝説がある。
しかし、同書はその都市伝説を否定する。当時のバレーボール日本代表選手たちが、自分たちもオリンピックの前に体操服メーカーから密着型ブルマーを営業されたことがあるが、下着のようで恥ずかしくてとてもはけないと断ったと証言しているからだ。