●タブー化が生みだしたトリプルアクセル依存
実は、真央ファンからこうした攻撃を受けていたのは真っ当なフィギュア解説をつらぬこうとした荒川だけでなく、国内のライバル選手も「在日」「帰化した朝鮮人」などと、明らかなヘイト攻撃も受けていた。
そういう意味では、真央のタブー化は当時、ネトウヨがつくりだした嫌韓ムードとリンクして広がっていった部分もある。キム・ヨナとのライバル関係が嫌韓感情に火をつけ、ネトウヨが過激な抗議や炎上攻撃を行うことで、マスコミがその動きに敏感になっていった部分があったのかもしれない。
もちろんこうしたファナティックな批判封じ込めは真央自身が望んでいたことではないだろうし、批判のタブー化は、むしろ、彼女の競技人生にとって、必ずしもいいことばかりではなかった。マスコミや解説者がトリプルアクセルを必殺技扱いして、欠点をほとんど指摘しなかったために、早い段階で矯正に取り組むことができず、肝心なところで金メダルに届かなかったという見方はいまも専門家の間で根強くささやかれている。
しかし、彼女はもう、現役のフィギュア選手ではなくなった。だとしたら、引退を機に、こうした歪なタブー的扱われ方からも自由になれるのだろうか。引退会見を見る限り、その日はまだしばらく遠そうな気がするのだが……。
(本田コッペ)
最終更新:2017.11.24 06:36