画像はBlu-ray『プロフェッショナル 仕事の流儀 特別編 映画監督 宮崎 駿の仕事 「風立ちぬ」1000日の記録/引退宣言 知られざる物語』(NHKエンタープライズ)より
やっぱり、宮崎駿監督は戻ってきてくれた。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがアメリカ・ロサンゼルスで開かれたアカデミー賞のプレイベントで、宮崎監督が現在長編アニメを製作中であると明かしたのだ。
周知のとおり宮崎駿監督は2013年9月、『風立ちぬ』を最後に引退を表明、2014年8月にはジブリ解散とも盛んに報じられた。しかし当時から、本サイトは「ジブリ解散はない」「宮崎駿監督は次の作品を必ずつくる」と繰り返し報じてきた。
当時のジブリ解散説はジブリが作画スタッフの契約を打ち切るなど大量リストラを進めていたことから出たものだったが、本サイトではこうしたリストラはむしろ宮崎監督の次回作に備えるための再構築であるとの見方を示していた。そして、宮崎駿監督の最後の映画が『風立ちぬ』になるはずがないと報じていた(https://lite-ra.com/2014/08/post-310.html)。
それは、宮崎監督が3.11の少し後、ちょうど『風立ちぬ』を製作している最中にインタビューでこんなことを語っていたからだ。
「今ファンタジーを僕らはつくれません。子どもたちが楽しみに観るような、そういう幸せな映画を当面つくれないと思っています。風が吹き始めた時代の入り口で、幸せな映画をつくろうとしても、どうも嘘くさくなってだめなんです」
「こういう時代でも、子どもたちが「ほんとうに観てよかった」と思えるファンタジーがあるはずですが、今の僕には分かりません。それが分かるまであと数年はかかります。それまでスタジオは生き延びなければいけない。いったい、僕はいくつになっているのか(笑)」
「生き延びるために、「コクリコ坂から」後の次の映画にとりかかっていますが、スタジオの大きな墓穴を掘っている可能性はおおいにあるわけです(笑)」
「世間がどんなににぎやかにやっていても、僕らはおだやかな落ち着いた方向へ舵をきるつもりです。ただ歳をとっただけだという可能性もあるんですが(笑)。でも、その方向に自分たちが探している新しいファンタジーがあるのではないかと思っています。まだ語るほどの内容はありませんが、そう感じています」
これらは、『本へのとびら──岩波少年文庫を語る』(岩波書店)におさめられた語り下ろしインタビューでの発言だが、宮崎監督がここではっきりと語っているのは、『風立ちぬ』はスタジオが生き延びるための映画であり、その先に、「こういう時代に子どもたちが『ほんとうに観てよかった』と思えるファンタジー」をつくるという目的があるということだ。それが何かわかるまで数年かかるから、それまでスタジオが生き延びなければならない、と。
これはつまり、数年先になれば『風立ちぬ』の次、ほんとうにやりたかった作品をつくり始めるという宣言である。