「正直、僕の取り組むことは今までと何も変わらないです。経営上の問題や不満があったから社長を退くわけではないですし、むしろ社長という肩書があったことで、今までのLDHの状況では自分のモチベーションが上がっていた部分は間違いなくありました。じゃあ、なぜ今退くのかといえば、社長という肩書が、今のLDHで自分がやるべき事、盛り上げなければいけないエンタテインメントに対して、邪魔になってしまう場面ができ、自分の可能性や、やりたいことに対して、制限がかかるようになってきたからです。ここ数年で会社の規模も大きくなり、LDHとしても新しい未来に向かっていこうというなかで、自分のすべてをLDHのクリエイティブに注いでいける体制にしたかったのと後継者を育てたかったので、クリエイティブに専念することに決めました。自分はもともとパフォーマーとして表現してきた人間ですし、エンタテインメントの創造に力を発揮するタイプだと思っているので、これからはもっとフットワーク軽く、いろいろな現場に行ったり、おもしろそうな人に会いに行ったりしたいです。やることも、やれることも変わらないのですが、確実にクリエイティブに使える時間は増えます。肩書が変わるだけでこんなに気持ちが違うのかという感じです。個人的にはそれがいちばん大きい変化かもしれません」
企業トップの人事異動という大事な事柄にも関わらずこんなにもボヤっとしている理由、それはHIROが社長を退任することになったきっかけを思い出せばすぐに理解できる。
「週刊文春」(文藝春秋)16年11月3日号が報じたレコード大賞買収疑惑は記憶に新しい。芸能界のドン・周防郁雄社長が率いるバーニングプロダクションが、三代目 J Soul Brothersにレコ大をとらせた見返りとして、LDHに1億円を請求していたとすっぱ抜かれたわけだが、その記事の冒頭には、HIROの社長退任が発表された日(10月23日)の2日前に「週刊文春」側からこの問題についてLDHに質問を送っていたと記されていた。
さらに翌週の「週刊文春」16年11月10日号では、周防社長が「週刊文春」報道に激怒したと報じられ、エイベックスとLDHに情報源を探すよう厳命していたり、雑誌の早刷りが出た段階で各メディアに後追いしないよう呼びかけていたと記されていた。当然、LDHはこれまでレコ大騒動に関して何の声明も出していないが、状況からHIROの社長退任はこの問題の責任を取るかたちのものであったのは明白だ。
「その通り、HIROさんの社長退任はレコ大騒動を受けてのものです。でも、退任の理由としてそのことを認めるわけにはいかない。そこで出てきたのが『新体制移行』というアイデアでした。今回の発表では同時に、『LDH USA』の他にも、欧州を網羅する『LDH EUROPE』と、アジア全域を視野に入れる『LDH ASIA』を立ち上げることや、飲食店事業を『LDH kitchen』、ファッション事業を『LDH apparel』、ダンススクール事業を『LDH expg』と名付けてブランディングし、メンバーも密に関わっていくと発表されています。こっそり社長を変えるだけでは格好がつかないということから大規模な改革をぶちあげたのでしょうが、ファンはもう何が何やらといった感じです」(芸能関係者)
年始に発表された情報によれば、三代目J Soul Brothersは全国ドームツアー、GENERATIONSは全国アリーナツアーと海外ツアーに加えアルバムも発売予定、EXILE THE SECONDもアルバムをリリース予定、また、夏と秋には昨年カルト映画化した『HiGH&LOW THE MOVIE』の2と3を連続で公開、さらに、飲食事業やスクール事業でもロサンゼルスや上海などへの海外展開が予定されているという。企業ロゴですら炎上するこのゴタゴタのなかで、果たして予定されている膨大なプロジェクトを完遂させることなどできるのだろうか? 当サイトは今後もLDHを生暖かい目で見守っていきたい。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.15 05:54