しかし、これ、周防社長はまるで自分がサザンを見出したかのように語っているが、今もバーニングがよくやっている「強奪ビジネス」そのものではないか。弱小プロダクションですでに売れ始めているタレントに目をつけて、わずかな金額で「タレントを譲れ」と迫る。だが、弱小プロはバーニングからこのオファーを出されて断ったら、どんな報復を受けるかわからないから、絶対に断ることはできない。それをまるで自分の手柄話のように語るのだから、やはりドンはこのやり方が当たり前のビジネスだと考えているのだろう。
しかも、周防社長の話はここからサザンの所属するアミューズへの批判になっていくのだが、これもすごい。
実は、当初、周防社長はサザンの版権をずっと所有できるつもりでいたのだが、サザンの大ヒットでアミューズから弁護士を通して版権を返して欲しいと内容証明が届いたのだという。
〈「実は大里君は、ぼくが奥田君に5000万円払ったことを知らない。ただ、弁護士まで頼んで喧嘩してもしかたがないと思ったので、それ以降のサザンの曲は、音楽出版権を持っていません。
アミューズからは、ぼくが出した運営資金は返してもらっていません」〉
この運営資金というのは、アミューズへの出資と運営資金のこと。周防社長によると、実はアミューズは当時ナベプロ社員だった大里氏と50対50の出資でつくったのだという。しかし、なぜか、周防社長は名前を出さなかった。
〈「ぼくは資金は出すけれど、2人の連名だとこちらにも欲が出るかもしれないし、君もやりにくいだろう、ぼくの分も持っていてくれという約束をしたんです。文書はありません。口約束です」〉
これ、税法上問題なんじゃないの?という気もするが、とにかく、周防氏にしてみると、サザンをアミューズに入れるための5000万円も出した、アミューズ自体の資本金も半分は出している、運営資金も出した。だからサザンの版権を持っているのは当然だと。しかも、これにはさらなる後日談があった。
〈アミューズが株式上場したときも、何の挨拶もなかった。大里君が上場して、豪邸を建てた、という話を聞いたから、当時の役員に『アミューズに、10億円貸してくださいと言って来てくれ』と行かせました。見事に断られてしまいましたけれどもね〉
周防社長は、一連の経緯を語ることでサザンの版権所持を正当化しようとしたのだろうが、すでにサザンの最初の5曲の音楽出版権をもっていることで、バーニングは相当な利益を得ているはず。それなのに、さらに10億円を要求するとは……。