結局、若い衆を外に立たせて挨拶させるなど、いかにもヤクザだと分かる行為を慎むことを条件に葬儀場を使わせてもらえることになったのだという。ヤクザのメンツ丸つぶれだが、もうそういったことに構っている時代でもないのかもしれない。そして若頭は続けてこのように語ったという。
〈『貸したら葬儀の途中でもやめさせるし、ヤクザに利益供与したとみなして処遇されることもあります』なんて言われたそうですよ。まぁ、通報されて警察が来ない限りは、ここも『気づかなかった』で通してくれることになったんですが、もしもの時は先代(親分)も(火葬途中で中止になって)『ミディアム・レア』ですよ〉〉
もしかしたら、そう遠くはない未来、「ヤクザ」は映画やドラマのなかでのみ存在する人々になるのかもしれない。本書のなかで、二次団体組長はこのように語っていたと書かれている。
〈「これからどうなるんでしょうね、ヤクザ」
すると組長はいつもの馬鹿笑いではなく、ハハッと軽く笑った。そんなことはいつも仲間内で話題になっていて、とっくに回答は用意している。そんな感じの笑いだった。
「まぁ、壊滅でしょうね。犯罪組織に特化して生きながらえる残党や、一部の過激派のようなグループは出てくるでしょうけど、既存のヤクザのスタイルは存続できませんよ」〉
(新田 樹)
最終更新:2016.11.03 12:10