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人気作家たちは永遠の敵「〆切」にどう苦しみ、どう対応したのか? 逃亡、言い訳、謝罪、逆ギレ、開き直り…

『〆切本』(左右社)

「仕事」とは〆切や納期との戦いであり、それはどんな職種でも同じことなのだが、数ある仕事のなかでも特にその戦いが壮絶なもののひとつが作家である。そんな作家たち約90名が綴った〆切破りの言い訳を集めた『〆切本』(左右社)が最近出版され話題を呼んでいる。

 作家という人種はとにかく「〆切」を恐れる。それはどんな大作家であろうと例外ではない。筒井康隆と吉行淳之介は本書におさめられた対談のなかで、〆切に対する恐怖のあまり、〆切に追いやられる夢を見ることがよくあると語り合っている。

 まず、筒井の見る夢はこんな具合だ。夢のなかで彼は、作家であり大学生であるという設定になっている。そして、こんな悪夢を見るのだと言う。

「作家で原稿を書いていて、締切に追いまくられて、そのために大学に行けないわけです。出席日数が足りなくて落第しそうになる。さあ大変だというんで、親爺におそるおそる相談するんですがね。また一年落第しそうだというと、普段なら怒るはずの親爺が怒らない。まあ落第しても、いまのお前なら原稿料で一年分くらいの学費は払えるだろう(笑)。……確かにその通りだと思って、ホッとするわけです」

 また続けて、こんなシュールな夢も見ると語る。

「締切に追われているときの、原稿を書いている夢。原稿用紙のマス目の数が明らかに違うわけですよ。縦二十字以上、横を見たらワアッと何十行もある(笑)。それをあしたまでに二十枚、というのはこわいです。ぼくは原稿用紙の枚数を稼ぐ方法なんていって、自家製のマス目の少ない原稿用紙を作ればなんてことを考えたりしているから、夢で逆にバチが当たるんだな(笑)」

 その一方、吉行淳之介もこんな夢を見ると語っている。

「自分がなぜかオーストリアにいて、突然週刊誌の連載小説をやっていたはずだということを思い出すんだけれども、もうどうしようもない。これから航空便で送るにしても、なに書いていたか、続きがよくわからない(笑)。これは苦しいね」

 作家がこれだけ〆切を恐れるのは、もちろん、原稿をめぐって編集者との攻防があるからだが、原稿を催促する編集者に対して作家はどのように対処するのか。ここでどんな言い訳を並べるかに、その作家の個性がよく表れる。

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