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誕生から10年、「草食男子」生みの親が真逆の使われ方に怒りの告白! 流行語を保守的に誤用するメディア

 しかし、この次に起きることに比べれば女性ファッション誌による誤解はまだ小さいものといえる。二つ目の変化は、08年のリーマン・ショックをきっかけにして起こる。深刻な不況に突入していくなかで、「草食男子」という言葉は、批判していた当の団塊・バブル世代のオヤジたちによって「イマドキの若者たちはけしからん」論に矮小化されてしまったのだ。

「2008年のリーマン・ショックで景気が悪化したことが大きかったですね。
『車が売れなくなったのは草食男子が増えたからだ』と新聞・テレビが取り上げたんです。Wikipediaに私が名づけ親だと書かれるようになり、取材も増えたので、責任感から『違います、褒め言葉ですよ!!』と慌てて火消しを始めましたが、間に合わず、燃え広がる一方でした」

 オヤジ世代による若者への説教の道具と変化した結果、「草食男子」という言葉は、09年に「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に選ばれるが、実はこのときから深澤氏は明らかな誤用が広まっていることに警鐘を鳴らし続けている。この「流行語大賞」の表彰式でも彼女は「草食男子は、この難しい時代を、“よりよく”よりも“ほどよく”生きていこうとする『古くて新しい男らしさ』を持っています。彼らは面白い、素敵な存在です」とスピーチしていた。

 その後、深澤氏は「草食男子」という誤用された言葉を盾に若者を揶揄するオヤジたちの論調に対し反論を開始する。

「CREA」(文藝春秋)12年7月号では、「いまの若者は留学をしないので内向き」という巷間言われている論評に対し、1985年には1万5000人強しかいなかった留学生は、リーマン・ショックの影響で留学生が減った2008年ですら6万7000人弱もいるとデータを示しつつ、そのような報道が出る理由として、かつては留学先にアメリカを選ぶ生徒が75%もいたのに対し、現在では50%ほどに減っているからではないかと推察。そういったことを考慮すると、アメリカ以外の国にも目を向けるようになった現在のほうがよほどグローバルではないかと看破している。

 また、「THE 21」(PHP研究所)12年10月号では、「現在の若者は恋愛しない。だから、少子化も止まらない」という意見に対しても疑問を呈している。そういった報道が出る論拠として提示されているのは厚生労働省が発表した「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」にある「異性の交際相手がいるか」というアンケートに対する回答の比較なのだが、そのデータを仔細に見ると、ある疑問点が出ると深澤氏は語る。「友人として交際している異性がいる」という、現在の若者にとっては意味のよく分からない質問が入っているのだ。

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