しかし、こうやって防衛大臣になった後の態度を見ていたら、これらの発言がいかに中身のない、無責任なものだったかがよくわかるだろう。おそらく、稲田氏は当時、「保守派のマドンナ」などとおだてられ調子づき、たいした覚悟も考えもないまま、安倍首相をはじめとする“右翼オヤジ”たちにウケる発言をひたすら連発していたのだ。ところが、防衛相という責任のある立場になって、過去のトンデモ発言の数々を突きつけられると、まともな反論をすることも撤回して反省することもできず、右往左往しているということなのだろう。そして、靖国問題については、まさかの涙ぐんでしまう失態まで演じてしまった。
この稲田防衛相の国会答弁のヒドさには、保守派の間からも大臣としての資質を問う声があがっている。
だが、事態は稲田防衛相の「覚悟のなさ」「言うだけ番長ぶり」を嘲笑して済むような状況ではない。なぜなら、稲田氏がかつて無責任に口にしていたことは、次々と現実化されているからだ。社会保障費を削りつつ防衛費を増やしていることはもちろん、核保有の問題にしても、今年4月には閣議で「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」とする答弁書を決定するなど、着々と話は進行している。おそらく次は、やはり彼女が語った「国民の一人ひとりに自分の国を守るために血を流す覚悟」を強制する憲法改正が控えている。
“保守派のマドンナ”の過激発言の背後には、彼女にそれをしゃべらせていた安倍首相はじめとする本物の“極右ジジイ”どもがいる。私たちはそのことの恐怖をゆめゆめ忘れてはいけない。
(水井多賀子)
最終更新:2017.11.24 07:20