さらに不可解だったのが、スポーツ報知だ。3日20時すぎに「森喜朗会長、国歌「斉唱」と「独唱」を勘違い? 選手に強い口調で苦言」というタイトルの記事を打ったのだが、ほどなく削除。まったく違うタイトルの記事に差し替えた。内容も一部修正している。
報知といえば読売グループのスポーツ紙だが、本サイトでも繰り返し指摘しているように、最近の読売は、官邸の顔色を忖度する体質が蔓延している。今回の記事タイトル差し替えも、政権や日本オリンピック委員会からの抗議、あるいはネトウヨの“電凸”を受けてのものという可能性もあるが、いずれにしても過剰な自主規制であることは間違いない。
過剰な自主規制という意味では、実は第一報を報じた朝日も、同じ。事実関係として斉唱でなく独唱だったことは書いているものの、森の間違いとは指摘していない。完全に腰が引けているのだ。
いったい、メディアのこの及び腰はどういうことなのか。今回の出来事は、裏の取りきれないスキャンダルでも、政権の政策を真っ向から批判するようなものでもない、たかだか失言癖のあるトンデモ元首相の勘違い発言に、何をビビっているのか。
おそらくは、「愛国心」「日の丸」「君が代」というワードの前に、思考停止してしまっているのではないか。権力者側が明らかな勘違いをしているにもかかわらず、政権やネトウヨに「反日」「非国民」と抗議されることを怖れて勘違いの事実さえも報道しない。
問題は、スポーツの場に愛国心をもち込むべきか否か、国歌を強制すべきか否か、というレベルのことではない。それ以前の問題だ。
これでは「反日」「非国民」という言葉の前にメディアが思考停止し、軍部の暴走を許した、戦中のような状況と変わらない。大袈裟な話ではなく、メディアの萎縮が相当ヤバいところまで来ている。
(エンジョウトオル)
最終更新:2016.07.04 11:02