また「オタクのライト化」の進行は消費傾向にも表れている。2004年に試算されたオタク一人あたりの消費額は10万円。それが2013年には約2万5000円という数字が出ている。つまりオタクの個人消費は10年で4分の1に。しかしオタク市場全体の金額をみると、2004年に2600億円だったのが、2013年には1兆5億円にまで膨らんでおり、10年間で4倍近くになっているのだ。
一人あたりの消費額は減っているにもかかわらずオタク市場全体の規模はますます拡大している――これが意味するのはマニアックに金をつぎ込むコアなオタク層が減って、まさにライトな、あまり金を使わないオタクの数が増えてきているということだ。さらに著者の私見では、オタク市場1兆5億円という数値も実際にはもっと大きいのだという。
〈オタクジャンルの広さ、オタクを自称・他称する若者の多さを考えるとき、オタク市場は、おそらく3兆円程度はあるのではないかと見ています〉
さて、その是非はさておきオタクが変わってきているのは実感レベルで誰もが感じていることだろう。消費行動からオタクの変遷を分析する著者は、従来型のオタクからリア充オタクの間に「知識から態度へ」というパラダイム・シフトを見出す。
かつてのオタクは知識を増やすことで自分の好きなものへの愛を表現していた。そのために雑誌を買い、ビデオソフトを買い、設定資料集を買い集めた。膨大な時間と金を投資してこそオタクを名乗ることができたわけで、そこにはある種の選民思想があったといえるのだが、ネットが普及し、よって無料で簡単に情報を得ることができるようになって、そうした優位性は失われてしまった。それが現在の20代後半から30歳前後にあたるオタク第三世代までの状況である。
では、その次の第四世代に該当する「リア充オタク」は対象への愛をどのように表現するのだろうか。
そのひとつが「無限回収」だ。これはたとえば自分の好きなキャラやアイドルに一点集中して、同じ商品を何十点も買いまくる行為をいう。グッズを販売する側も「無限回収」をあてこんで単価の安い缶バッジなどの商品を数多く提供しているそうだ。