そして今回は、川島なお美だ。「僕は川島さんががんの切除手術をうけたこと、ハッキリいえば手術に引きずり込まれていったことを含めて、主治医らが行った治療には大きな疑問を抱いています」というのだ。
近藤医師によると「セカンドオピニオン外来」に川島がやってきたのは肝臓内に影が見つかってから1カ月のこと、彼女の検査画像は「(MRI検査での)病巣の大きさが二センチほどでした」「検査画像では転移の所見は認められなかった」。
川島は「十月から始まる稽古に備え、『手術をしてしまおうかとも思いましたが、やはり年内のハードな仕事はできなくなると考え直し、しばらく様子を見ることにしました』(略)『先生、そんな仕事優先の私は間違っていますか』と尋ねてき」たのだ。
これに対し、近藤医師のセカンドオピニオンはどうだったか。
「当初の画像所見の通り、ステージⅢまでの胆管がんだったとしても、切除手術を受けた場合、何もしなければ少なくとも一年は元気に生きられたはずの人が、合併症も含めてバタバタと亡くなっていく」「川島さんは『切除手術も抗がん剤治療も受けたくない』とおっしゃる一方で、『とにかく初発病巣だけは何とかしたい』との思いを持っておられるようだったので、僕は切除手術に比較して体への侵襲度がはるかに低い『ラジオ波焼灼術』を提案しました。これなら入院期間も格段に短く済みますからね。彼女には『万が一、転移が潜んでいたとしても、病巣にメスを入れる切除手術とは違い、肝臓に針を刺して病巣を焼く焼灼術なら、転移巣がどんどん大きくなってしまう可能性も低いでしょう』」「(放射線治療との比較をすれば)ただ、制御率の面では、ラジオ波だったら百人やってほぼ百人がうまく行くんだけど、放射線の場合は百人やってうまく行くのは九十数人と取りこぼしが出る可能性があるんです。それでラジオ波を提案したところ、川島さんもかなり乗り気の様子で、『今の主治医に相談してみます』とおっしゃっていました」
ところが、近藤医師の相談のあと4ヵ月後の14年1月に川島は切除手術を受けた(しかし、14年7月に再発)。これに対し近藤医師は「外科の主治医が寄ってたかって説得にかかったのかもしれません」と推測し「川島さんが切除手術を受けなければ、余命がさらに延びた可能性は高く、あれほど痩せることもなかった」と語るのだ。