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小室哲哉、五輪エンブレムパクリ騒動を斬る! サノケンが批判された本当の理由は…

 身も蓋もない話だが、何かに似ている作品だとしても、そこにキラリと光るものがあれば、人々は問題なく受け入れる。それは小室自身の作品もそうだし、もっと遡れば、モータウンなど当時のアメリカ黒人音楽の焼き直しにほんの少しオリジナリティを混ぜたビートルズの音楽に世界中が熱狂した状況もそうだったと言えるかもしれない。

 そして、彼は「創造」と「模倣」の理想として、「ヒップホップ」をあげる。ヒップホップは、ご存知の通り、既存の楽曲のフレーズを借用し、そのトラックにラップを乗せることで生まれた音楽だ。誕生したときからずっと「模倣」と「創造」の関係について問われ続けてきたジャンルでもある。

〈ヒップホップは、サンプリングを多用して、その上に自分の主張をのせてラップで語るということをやりましたが、それは予算や施設環境がないから仕方なくそうなったところから生まれてきた。人のものを使ってでも、とてつもなく言いたいことがあったわけです〉
〈だから僕の中の“模倣と創造”というラインでいえば、ヒップホップ文化が“正しい模倣”だし、模倣と創造力の極みで、ここ何年間の音楽業界の最後の成功例だと思います。これしかないところから何かを作り上げよう、というものすごいエネルギーを感じるものがヒップホップだったと思います〉

 あくまで「模倣」から始まる「創作」ながら、そこに凄まじい「熱」を入れ込むことにより、文句を言わせないぐらいリスナーやオーディエンスを圧倒させる。であれば、きちんと芸術としてもビジネスとしても成立する。そんなパワーがヒップホップにはあると小室は考えているのだ。

 小室が前提として語っているように、デザインと音楽では、同じアートでも種類が違う。また、サノケンの場合は、公共の催し物に関わる創作であったというのも、小室の創作とはまた異なる種類のものではある。だが、創作に携わる者としての彼の指摘はなかなか参考になるものではないだろうか。

 今後、どんなエンブレムができあがってくるのかはまだ分からない。だが、なんにせよ、我々を驚かせてくれるような「エナジェティック」な作品が生まれると良い。サノケンエンブレム白紙撤回騒動が単なるムダに終わらぬためにも、そんなエンブレムが見られるのを楽しみにしている。
(新田 樹)

最終更新:2015.10.23 11:02

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