『アクターズ読本』(洋泉社)
NHK連続テレビ小説『花子とアン』でブレイクし、『天皇の料理番』(TBS系)で幅広い層に知名度を上げた俳優の鈴木亮平。甘いマスクと日本人離れした肉体が目を引くが、なにより彼の名を広げたのは、その壮絶な役づくりだ。
通常は70kgほどの体重だが、見せ場がV字水着姿という映画『HK 変態仮面』に主演した際には、85kgまで増やした後に脂肪だけを落として体脂肪は8%に。病に侵される役を演じた『天皇の料理番』では食事制限で56kgまで落とし、心優しき大男を演じる映画『俺物語!!』では86kgまで増やし、増減は計30kgあまり。
しかし、その鈴木にブログで「俳優としての格の違いをまざまざと見せつけられた」「まさに狂気!もはや殺気!」と言わしめた男がいることをご存じだろうか。近年、多くのドラマや映画に引っ張りだこの男――演劇ユニット「TEAM NACS」の安田顕、彼こそが鈴木を圧倒した俳優なのだ。
安田といえば、大泉洋を全国区に広めたローカル番組『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)の“準レギュラー”として、数々の伝説を生みだした“奇跡を呼ぶ男”。テレビ番組にもかかわらず早食い対決で牛乳を「大リバース」したり、同局マスコットの「onちゃん」として着ぐるみをかぶって出演していたはずが、いつの間にか着ぐるみの顔部分を外して煙草を吸っている瞬間をカメラに撮られたり。『鈴井の巣』(同)という番組では、包茎手術を受ける一部始終を放送するなど、端正な顔立ちと、残念な中身のギャップで熱烈なファンをつかんでいる。
もちろん、ファンが支持しているのはたしかな演技力があってのこと。鈴木の体重増減のように“数字”として表せるものではないが、安田の役づくりは愚直なほどの役にのめりこむ彼の姿勢にあるのだ。
たとえば、TEAM NACSの舞台『COMPOSER~響き続ける旋律の調べ』でモーツアルトの亡霊を演じた際には、幽霊なのに色黒なのは変だと考え、日焼け対策を徹底し、青白いほどの白さを死守。さらには眉毛を勝手に剃り落し、事務所からお灸を据えられたという逸話を持つ。