だが、『笑点』といえば、安倍政権の親衛隊である日本テレビの番組。円楽に局から圧力がかかるのではないかということが危惧されている。日本テレビの関係者が語る。
「プロデューサーはたぶん円楽さんの政治ネタにはハラハラしていると思いますよ。でも、円楽さんは『笑点』のレギュラー出演者の中でも一、二を争う人気落語家。歌丸さんが体調不良で休養したときも、次期司会者として円楽さんの名前がさかんに取り沙汰されたほどです。そういう人のネタを止めるのはなかなか難しい。それに、これまでは大きな話題にもならなかったので、黙認してきたというところでしょう。おそらく、局としては注目度の高い『24時間テレビ』では安倍政権批判をやってほしくなかったと思いますよ。ただ、その日は逆に生放送だったので、止めようがなかった。円楽さんはもしかすると、それを見越して確信犯でぶちこんできたのかもしれません。ただ、今回はちょっとした騒ぎになったので、もしかすると、今後、上層部から何か圧力のようなことがあるかもしれない」
しかし、考えてみれば、テレビでこの程度の政権批判をするのは少し前ならごく普通のことだった。かつてはいろんな芸人が普通に田中角栄の金権ぶりをからかい、リクルート事件や佐川急便事件が起きれば、自民党の腐敗を風刺していた。民主党政権時代はもちろん、高支持率を誇った小泉政権時代でさえ小泉首相の発言やブッシュ大統領との関係を茶化すようなギャグがテレビで普通に流れていた。
それが、今はこの程度の政治風刺でも大きな話題になり、批判の声があがってしまう。そしてテレビ局関係者がびくついてしまうのだ。逆に言えば、安倍政権がいかにテレビ局を締め上げ、その結果、“政権批判は許されない”という閉塞した空気が日本を覆うようになったか、ということだろう。
しかし、落語という伝統芸能にはもともと、混乱する社会、政治、貧困などを軽妙に取り上げ、大衆はそれを聞いて、鬱憤を笑い飛ばすという役割がある。
これから先、もし日本テレビが圧力をかけるようなことがあっても、円楽以下、『笑点』出演の落語家のみなさんはぜひ、臆することなく政治風刺ネタをどんどんやって、安倍首相や自民党のでたらめぶりをからかってほしい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.08.26 08:11