事実、早くもその歴史修正の本質が露呈している。談話閣議決定当日の14日、外務省はホームページ上の「歴史問題Q&A」というコーナーから、歴代日本政府の歴史認識に関する箇所などを削除。ページでは、第二次世界大戦における日本の行為が「植民地支配と侵略」とされており、また「痛切なる反省と心からのおわびの気持ちを常に心に刻み」と記されていた。外務省は、安倍談話に則した内容に更新し、再掲載するとしている。つまり、安倍政権は、村山談話を継承などしておらず、「未来志向」の麗句のもと、アジア諸国への「おわびと謝罪」を政府ぐるみでネグりはじめたわけである。
しかし、どうやらこうした安倍談話の危険な本質に気がついていないのは日本国民だけで、国際的には完全にバレてしまっているようだ。海外メディアは冷静に安倍談話の欠点を指摘している。中国、韓国については多く報じられているので触れないが、とりわけ注目すべきは欧米メディアの分析だ。
アメリカの主要紙(いずれも電子版)では、「ワシントン・ポスト」が「日本の指導者、第二次大戦で謝罪に至らず」という見出しで、米「ウォール・ストリート・ジャーナル」が「日本の安倍首相は第二次世界大戦における直接的謝罪の手前で止めた」との見出しで報じた。また、「ニューヨーク・タイムズ」も安倍談話について、ボストン大学の政治学者・トーマス・バーガー教授の「安倍首相は、歴史を“誰も非難できないような種類の歴史的ツナミ”として描くことで、日本の責任を希釈化した」というコメントを紹介した。
イギリスも同様だ。日経新聞によれば、英ロイター通信は、安倍首相が「彼自身の新しいおわびは表明しなかった」と報じ、英国放送協会(BBC)も、独自の新たな謝罪は示さなかったと分析。さらに、時事通信の報道では、英保守系高級紙「タイムズ」は15日付朝刊で、安倍談話についての社説を掲載し、「恥ずべきほどなまでに、(戦争中の)日本の罪ときちんと向き合わなかった」と論評。「原爆忌や終戦記念日で、日本は戦争の加害者というより、被害者であるという神話を維持している」として強く非難した。
フランスメディアの報道もまた安倍談話に批判的だ。「リベラシオン」電子版は昭仁天皇の戦後70年における本心を紹介し、それと対比させる構成で安倍首相を「国家主義者」として批判的に談話を報じた。また、仏のメジャー紙「ル・モンド」は、「安倍総理大臣個人として、過去の侵略や植民地支配に対する謝罪を一切行っていない」と指摘している。