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自ら女郎に下った醜女の幼馴染、25円で売られた友達…昭和の遊郭を描いた伝説のマンガ『親なるもの 断崖』がスゴい!

 著者の曽根富美子は、児童虐待や親子問題などをテーマに、鋭い洞察力で人間の姿を描く社会派マンガを数多く発表している作家。最近では自身のパート体験を題材にした『レジより愛をこめて~レジノ星子~』を「モーニング」(講談社)で連載したほか、油絵・水彩画家としても活躍している。

 本作『親なるもの 断崖』はそんな著者の代表作である。1988年に「月刊ボニータイブ」(秋田書店)で連載を開始。92年には名だたるマンガ家が選考委員をつとめる日本漫画家協会賞優秀賞を受賞するなど、当時から傑作の誉れ高かったが、長らくのあいだ絶版という状態であり、中古市場では数万円のプレミアのつく、知る人ぞ知るマンガとなっていたという。

 しかし2015年、この幻の名作は再び表舞台に立つこととなる。例の一度見たら忘れられない“醜女バナー”が話題を呼び、リンク先の電子書籍配信サイト「まんが王国」では47万ダウンロードを記録と異例の大ヒット。また、読者の感動を伝える声がSNSにあふれ、7月には紙の単行本が復刊された(筆者が入手したのはこの「新装版」だったのだ)。

 では、改めてこのマンガの詳しい内容を紹介しよう。

 昭和初期、世界恐慌の煽りを受けて庶民は貧困にあえいでいた。男尊女卑の家族観が絶対であった時代において、一家の娘はモノ同然。4人の少女が青森の貧しい農村から室蘭の遊郭へ売られていくところから物語ははじまる。

 室蘭といえば、古くは北海道開拓からタコ部屋労働者が集まることで栄えた街。実はその発展を陰で支えてきたのが遊郭の存在だ。労働者のガス抜きのため成立した女郎屋街は、やがて政府の公認を受け、「幕西遊郭」として大きな金の流れを生み出していく。さらに日露戦争以後、製鉄企業の兵器工場が居を構えるようになり、戦争が起こるたび軍需景気を迎える「死の商人」の街へと変貌していくと、遊郭の客層にも軍人や工場関係者が加わっていった。

 そんなキナ臭い時勢のなか、一緒に遊郭にやってきたヒロインたちの運命は大きく分かれていく。

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