また、文谷氏はこうも指摘している。
「そもそも、レーダーやソナーは大した脅威でもない。レーダーでは基本的に水平線までしか探知できない。艦船を監視できる範囲は50キロメートル程度の距離が限界である。また、ソナーにしても機械騒音等から、理想とは程遠い配置場所である。実際、米海軍SOSUS等の固定式ソナーについても、単独で静寂な海底に設置されている。そしてなにより、戦時には容易に破壊できる。この点で、あまり脅威にはならない」
しかも、中谷氏の答弁を見ればわかる通り、中国側の動きはについては「配備する可能性がある」「把握される可能性がある」と、“あるかもしれないこと”を語っているに過ぎない。ましてや櫻井氏の“弾道ミサイル発射装置”に至っては妄想というほかはない。弾道ミサイルで日本を攻撃しようと思ったら中国本土からでも十分届く。わざわざあんな脆弱な海上の建造物に基地をつくることはあり得ない。
当然、こんなことは軍事の専門家である防衛官僚はみんな知っている。21日の閣議で平成27年版の防衛白書が了承されたが、当初案では東シナ海での中国のガス田開発に関しては「施設建設や探査を行っている」との表現にとどまっていた。ところが、自民党国防部会で「表現が弱すぎる」「このままでは了承できない」とヤリ玉にあげられ、急遽、〈(中国が)新たな海洋プラットホームの建設作業などを進めている〉〈一方的な開発〉などの文言が付け加えられ、中国の脅威を強める記述になったことで、ようやく承認をとりつけた。
小さい脅威を大きく見せつけ、法案を成立させようという魂胆が丸見えだ。
新聞はどこも書いていないが、そもそも、あのガス田のプラットホームが軍事的脅威になるから、それに備えるために安保法制の整備を急げというのは論理的に破綻している。海上自衛隊はもう10年以上前からガス田周辺を重要な監視対象にしている。毎日、哨戒機を飛ばし、低空で写真撮影をするなど、嫌がらせに近い威嚇行為も行っている。そして、万一不穏な動きがあれば、すぐにでも対応できる態勢を整えている。これが専守防衛の真髄だ。