彼自身、ささやかながらこの考えを実践している。毎年、「NANO-MUGEN FES.」という音楽フェスを主催し、周囲のミュージシャンを自分たちのファンに紹介するのも音楽業界を底上げするための試みだし、「THE FUTURE TIMES」という無料配布の新聞をつくり、社会問題についての啓蒙活動を行っているのも、まさしくその一環だ。
ここまで紹介してきたように、単なるパフォーマンスではなく、深刻な危機感から社会的発言を行っている後藤だが、インタビュー中で彼自身「『アジカンのメガネがうるせぇこと言ってるな』で終わってしまうから」と自嘲している通り、このような芸能人・文化人の発言には「大した知識もないくせに」といった批判が飛び交う。
後藤正文もまさにそのひとり。彼がなにかを発信するたびに、ネットを中心に批判が飛び交っている。
だが、彼らのような芸能人・文化人が自らの主張を発信することの何がいけないのだろうか? 歴史を振り返れば、ボブ・ディランやジョン・レノンのメッセージがベトナム反戦運動を大きなうねりにしたし、サム・クックやマーヴィン・ゲイの歌なしでは公民権運動は成功しなかっただろう。
そういった力を信じ、批判を覚悟で自らの意見を主張する後藤正文を、当サイトは断固支持したい。そして、彼の音楽を聴く若い世代が、彼の言葉にも耳を傾け、政治について、社会について考えるきっかけになることを切に願っている。
(新田 樹)
最終更新:2015.06.19 11:42